【運送業専門行政書士が解説】運送会社の会社分割手続きの5つの注意点
近年では、運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を新規に取得するのが難しくなった影響もあり、「会社分割」を利用して運送業の許可を承継したいというご相談が増えてきています。
会社分割というのは、会社がその事業に関して有する権利義務の一部、もしくは全部を、他の会社に包括的に承継させるM&Aの手法です。
会社分割では、譲渡対象の事業に関する権利・義務を包括的に承継可能なため、一般的には、
- 取引先との各種契約の個別移転手続きが不要
- 手続きを短期間で済ますことができる
- 十分な資金がなくても実行できることがある
といったメリットがあると言われています。
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会社分割と運送業許可
そのため、組織再編の場面で会社分割の手法を採用する事業者様は多く、グループ会社の再編やM&Aの一環で、会社分割を利用して運送業許可を別会社に承継する事案も増えておりますが、運送業許可を会社分割で他社へ承継させる場合には、分割法人と承継法人の当事者間の合意だけでは足りないということに注意が必要です。
「なぜ当事者の合意だけではダメなのか」という疑問をお持ちの方もいるかもしれませんが、運送会社を経営するためには国土交通大臣の許可を受けなければなりませんので、運送業許可を会社分割の方法で他社へ承継させるためには、国土交通大臣の「認可」を受けないとその効力が生じないと法律で規定されているのです。
そのため、運送業許可を会社分割の方法で他社へ承継させるためには、分割効力発生日に先行して、分割認可申請を提出して認可を取得する行政手続きを行わなければなりません。
この運送業許可の分割認可申請の場面では、審査期間や承継法人の問題など、運送業が許可制であるが故の様々なハードル(吸収分割でも新設分割でも同様です)があります。
そこでこのページでは運送業専門の行政書士が、分割認可申請の場面での5つの注意点を解説いたします。
分割認可申請の5つの注意点
1.スケジュールに余裕はありますか?
会社分割の手続きをしたからといって運送業の許可は自動的に承継されませんので、運送会社の会社分割は、効力発生日に先立ち、分割認可申請を行い、運輸局内の審査・決裁を経て「認可」を受ける必要があります。
この運輸局での分割認可申請の手続きには、最低でも3ヶ月の審査期間が必要になると考えておいた方がよいでしょう。
役員法令試験に合格できない場合や、提出した書類に不備・不足があり補正が必要になる場合には、審査期間は3ヶ月以上になることがあります。
また、会社分割にあわせて商号変更や登記簿上の本店移転、役員変更を予定している場合は、運輸局との事前相談の段階で、どのような手続きが、どの時期までに必要になるかを確認した方がよいでしょう。
2.「資金計画」は検討されてますか?
運送会社の会社分割では、「資金計画」が重要になってきます。
なぜならば、一般的には会社分割は十分な資金がなくても実行できると言われてはいますが、運送会社の会社分割では、分割により事業を承継する法人の自己資金が、
- 事業の開始に要する資金以上である
- 自己資金が申請日以降、認可日までの期間中、常時確保されていること
が求められます。
事業の開始に要する資金の額は、分割する運送業の規模によって大きく異なるため一概にいくら必要であるとは断定できません。
正確な金額を把握するためには、運輸局が示している計算式にしたがって積算していく必要があります。
3.債権者の承諾はありますか?
会社分割では包括的に事業を承継するため、債権者から個別に同意を得る必要はないとされています。
一方で、運送会社の会社分割認可申請の場面では、営業所や車庫の賃貸人や、リース会社(事業用車両がリース車両の場合)から、契約上の地位を分割法人から承継法人へ承継することへの同意書が必要になってきます。
会社分割の際、分割法人が使用している営業所・休憩睡眠施設・車庫・事業用車両を承継法人がそのまま使用する事案が多いのですが、賃貸で利用している物件がある場合は、分割認可申請の準備段階で、債権者である賃貸人から地位承継の同意を取り付ける必要があります。
もし、債権者から地位承継の同意を得られない場合は、分割法人が使用している営業所・休憩睡眠施設・車庫・事業用車両は、承継法人は会社分割後に使用できないため、新たに調達する必要があります。
4.営業所、休憩睡眠施設、車庫、車両を変更する場合は要注意
先述のとおり、運送会社の会社分割では、多くの事案において、分割法人が使用していた営業所・休憩睡眠施設・車庫・車両を承継法人が使用することが多いのですが、一定の条件の下で変更することも可能です。
一定の条件は大きく分けて以下の2つです。
- 営業所・休憩睡眠施設・車庫であれば立地要件や広さなど、運送業で使用が認められている条件を満たしていること
- 新しい施設を加味した事業の開始に要する資金の額が、所要資金の額以下であること
運送業に使用する不動産を購入する場合や車両を一括で購入する場合には、しっかりと購入方法や時期を検討しないと、事業の開始に要する資金の額が膨れ上がってしまうため注意が必要です。
5.貨物軽自動車運送事業や倉庫業の吸収分割手続きは別途
分割法人が運送業以外の物流事業を経営しており、承継法人が運送業を含むすべての物流事業を承継する場合は、運送業許可の分割認可申請手続きの他にも、それぞれの事業を承継する行政手続きが必要になる場合があります。
例えば、貨物軽自動車運送事業や倉庫業ですが、以下のような手続きが必要になります。
- 貨物軽自動車運送事業:分割効力発生日以降に遅滞なく分割により事業の全部を承継させた旨の届出を行わなければならない
- 倉庫業(非発券倉庫業者):分割効力発生日から30日以内に届出を行わなければならない
- 倉庫業(発券倉庫業者):分割効力発生日より前に分割認可申請手続きを行わなければならない
運送業の分割認可申請は簡単な手続きではありません
運送会社の分割認可スキームを進める際には、上記5つの注意点をまずはご確認の上、分割認可申請の準備を進めていただければと思います。
とはいえ、運送会社の分割認可申請手続きを進めるにあたっては、ここまで紹介した以外に問題が生じることも多く、簡単に分割認可を受けられるというわけではありません。
例えば、分割効力発生日に向けて分割法人・承継法人・債権者などの関係者が多岐にわたるということも手続きが簡単には進められない原因になります。実際に私どもが関与した案件でも、債権者の意見がまとまらなかったため、分割効力発生日を後ろ倒しした事案が複数ありました。
行政書士法人シグマは、運送会社の吸収分割・新設分割認可申請手続きの実績が複数ある行政書士事務所です。
運輸局への分割認可申請のサポートを提供していますので、サポートをご希望の事業者様、士業事務所様はお問合せフォームやお電話よりお問合せください。運送業専門の行政書士が対応いたします。
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