運送業の営業所の決め方
トラック運送業の許可を取る際には営業所が必要だと聞いたので、自宅の物置部屋を営業所にしようと思っていますが問題無いですか?
自宅の一部でも問題ありませんが、用途地域や部屋の設備に注意しましょう。
物置部屋ということなので、机や椅子を置くようなスペースも無いとか、エアコンも設置していない、というのでは管理者が常駐して業務を行うことができませんので、許可取得は難しいと考えます。
営業所にも色々なルールがありそうですね。
それほど厳しいわけではありませんが、いくつか基本的な要件があります。
それでは営業所の選び方を確認してみましょう。
トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を取得するためには営業所が必要になりますが、この営業所はどんな建物でも良いという訳ではなく、いくつかのルールが定められています。
ルールは主に、
- 立地(営業所の場所)
- 建物
- 使用権限
- 広さ
- 車庫との距離
の5つについて決められています。
この記事では、トラック運送業のための営業所に関して、上記のルールについて詳しく解説していきます。
※規制のルールは特に言及の無い限り関東運輸局管内を前提に説明しています。
Contents
営業所の立地
用途地域
まず、営業所は以下の用途地域(インターネット、市役所、区役所などで調べられます。)には置くことができません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域(床面積1,500㎡を超えるもの、1,500㎡以下で3階以上の建築物)
- 第一種住居地域(床面積3,000㎡を超えるもの)
営業所が上記の用途地域にあると、そこをトラック運送業の営業所としては使用できません。
営業所の床面積が3,000㎡を超えるケースというのはかなり稀だと思いますので、現実的には第一種住居地域はあまり気にしなくても問題無いかもしれません。
営業所を置くことができない用途地域に物件があるということが物件の契約後に判明すると、契約費用や解約費用が全て無駄な出費になってしまう可能性がありますので、不動産屋さんが大丈夫と言っていても、必ず自分でも確認するようにしましょう。
シグマに手続きをご依頼いただいた場合には、シグマがしっかりと確認いたします。
農地
また、土地が農地である場合にも営業所を置くことはできません。
農地上の建物を使用したい場合には、農地転用手続きが必要になります。つまり、土地の地目が農地であっても、既に農地転用済であったり、非農地証明が出るような場合でしたら使用可能です。
農地がどうか不安なときは、農地委員会に確認するのが良いでしょう。
市街化調整区域
なお、市街化調整区域も原則として営業所を置くことができませんが、トレーラーハウスを使用することで市街化調整区域内に営業所を設置することが出来るケースも出てきています。
なお、トレーラーハウスを使用する場合は、事前に営業所所在地の市区町村の建築部局や、運輸局、運輸支局との調整をしなければなりませんので、事前準備が非常に重要です。
市街化調整区域は賃料が安いことが多いので、市街化調整区域に営業所を置きたいという事業者様が多いのですが、市街化調整区域内に営業所を置くことはハードルが高いのです。
営業所に使う建物
建物自体が、建築基準法や消防法に適合した合法建築である必要があります。
特にプレハブを使おうとするときには注意が必要で、プレハブであっても建築確認が必要な場合も多いので、「プレハブだから基礎工事も建築確認も不要だろう」と安易に考えてしまうのはリスクが高いです。
意外に違法建築になってしまっている建物も少なくありませんので、しっかりと確認をするようにしましょう。
違法建築は運送業の営業所で使えないだけではなく、行政から撤去するよう行政指導を受けることもありますのでご注意ください。
営業所の使用権原
当たり前ではありますが、営業所の建物を使用する権利が無ければいけません。
と言っても大袈裟なことではなく、自分の所有であったり、賃貸借していれば問題ありません。
例えば、社長個人が所有している建物を営業所と使用する場合は、個人事業主として運送業の許可申請をする場合は問題ありません。
一方で、運送業の許可申請を法人で申請する場合は、社長個人から法人へ、賃貸借契約や使用貸借契約を締結して、その内容を契約書にする必要があります。
賃貸借の場合には、契約期間が2年未満のケースですと、契約書に自動更新の文言が入っているかが問題になったり、場合によっては契約期間の延長や更新が必要になることもあります。
また、賃貸借で比較的多いケースが、トラック運送業の許可は会社で取りたいのに、賃貸借の契約者名義が社長の個人名義になっているようなケースです。
多くの賃貸借契約書には、転貸(又貸し)を禁止する項目が入っていますので、社長個人から会社に転貸するというのも難しいため、新たに契約者名義を変更することが必要になりますので、会社を設立する前に契約するような場合には、契約の際にその旨をあらかじめ大家さんや不動産屋さんに伝えておくと良いでしょう。
さらに、賃貸借契約の場合には、契約上の建物の使用目的も問題になることがあり、「事務所」などであれば問題無いのですが、「住居」になっているケースでは、別途大家さんから「事務所として使っていいよ」という内容の使用承諾書をもらわなければいけないこともあります。
なお、珍しいケースですが、住民協定など地域のルールによってトラック運送業の営業所として使用できないこともあるので注意しましょう。
営業所の広さ
広さについては特に明確なルールは定められていません。
しかし、営業所の機能を考えてみれば、パソコン、プリンタ、机、イス、キャビネットなどは現実的に必要になってきますので、床面積が1坪程度しか無いなど、明らかに営業所の最低限の機能を果たせないような広さでは、営業所として認められない可能性があります。
車庫との距離
営業所と車庫は併設するのが原則ですが、それが難しい場合には一定の範囲内であれば離れていても大丈夫です。
関東運輸局管内では以下の表の範囲であれば車庫と離れていても問題ありません。
営業所の所在地 | 直線距離 |
---|---|
東京都(23区)、神奈川県(川崎市・横浜市) | 20㎞以内 |
東京都(23区を除く)、神奈川県(川崎市・横浜市を除く)、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県 | 10㎞以内 |
この距離は、実際の走行距離ではなく、直線距離であることに注意が必要です。
なお、このように車庫と営業所が離れている場合、車庫から営業所への移動に車を使う際には、営業所での点呼前には事業用自動車は使用できませんので、自家用自動車で移動しなければなりません。
別の運送事業者が営業所として使用していた物件は要注意
別の運送事業者さんが営業所として使用していた物件の場合、営業所として使用しなくなってから移転や廃止の認可申請を行われていないと、こちらが申請しても運輸局の審査が中断してしまいます。
運輸局側の目線では、前の運送会社が実体的には使用していなくても、営業所移転や廃止の認可申請を行っていないままでは、前の運送会社がその場所を営業所として使用していると判断せざる得ないのです。
営業所を決める前にルールをチェック
これまで解説してきたように、トラック運送業の営業所に関しては、いくつかのルールが決められています。
営業所を決める前には、これらのルールをクリアできるかどうかをしっかりと確認しましょう。
行政書士法人シグマに手続きをご依頼いただいた場合には、営業所の要件に合致するかどうかの調査も行っておりますので、「この物件で大丈夫かな」というご不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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