運送業許可を取得してから運輸開始までの間に車両を変更したい場合
運送業(一般貨物自動車運送事業)の経営許可申請は、審査→許可→運輸開始という段階で進みます。
審査自体も関東運輸局管内に営業所を置く場合、最短でも約5か月かかり、許可が出てからは1年以内に運輸開始しなければなりません。
言い換えれば、許可が出てから運輸開始までに、長ければ1年かかるため、許可から運輸開始までの期間の間に、運送業許可を申請したときに想定していた車両に不具合が生じてしまい使用できなくなってしまった、などの理由で車両を変更したいということがあります。
具体的には、
- 緑ナンバーに変更しようと思っていた自社所有の白ナンバー車両が事故に巻き込まれてしまい廃車となってしまった
- エンジンやトランスミッションに不具合が生じたので整備工場に診てもらったところ、修理費用が高額になるため、車両を入れ替えた方が経済的に合理的
といったケースなどがあります。
結論から言えば、可能ではありますが、簡単ではありません。
そして、これは許可が出る前にも同じことが言えるのですが、基本的に運送業許可の新規申請後に車両を変更することは最後の手段と考えておいた方がいいです。
車両を変更すると事業計画の複数の箇所に影響を及ぼしてしまうため、思いもよらないところでつまづくリスクがあり、許可取得後1年以内に運輸開始ができなくなってしまいます。
なお、許可取得後1年以内に運輸開始をせずに行政処分等を受けたにもかかわらず運輸を開始しない(できない)場合は、事業許可の取消処分を受けることになります。
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意外と難易度が高い運輸開始前の運送業に使用する車両の変更
運輸開始後の車両変更は比較的容易ではありますが、許可の後から運輸開始前の車両変更はとりわけ難易度が高いです。
イメージ的には運輸開始前の方が簡単に変更できそうなのですが、実は逆で、大きく分けて3つのポイントをクリアする必要があります。
- 基準に適合した車両への変更であること
- 車両変更を含む所要資金が、運送業の許可申請時に申告した自己資金の範囲内に収まること
- 車両の大きさが、申請した車庫の収容能力および前面道路の幅員に収まること
運送業の新規許可審査では、事業計画が許可基準を満たしているかを審査対象としているのですが、その審査の基準として、事業に使用可能な車両についても定められており、運輸局ではそれを審査した上で許可をするかしないかを判断していますので、車両の変更をすると許可の前提が崩れてしまいます。
厄介な資金計画への影響
さらに厄介なのが、車両の変更によって資金計画にも影響が出てしまうことです。
運輸開始前の車両変更の場面では、車両変更後の「所要資金」が「自己資金額」の範囲内に収まっていないと承認を得ることができません。
車両変更をしたいケースでは、元の車両が不具合などで使えなくなってしまっているため、そこから新しい車両を用意するとなればほとんどの場合「所要資金」は増加することになります。
ここで「自己資金額を増やせばいいんじゃないの?」と考える方も多いのですが、「自己資金額」は、運輸局に新規許可申請をしたときに提出した残高証明書の額によって確定するため、申請したあとに変更することができません。
そして大抵のケースでは、それほど大幅な余裕を持って自己資金額を申請してはいないため、車両を変更するとなると所要資金が自己資金額を超えてしまうことになってしまいます。
したがって、許可申請準備の段階では、運輸開始までの間に不具合が生じるリスクの低い車両を選定するのが鉄則です。
とはいえ、完全に未来の予測ができるわけではありませんし、不可抗力で車両を変更せざる得ないこともありますので、そういった場合にも対応できるよう、当法人では、「自己資金額」は「所要資金額」ギリギリではなく、余裕を確保できるようにおすすめしております。
車両が大きくなるときは要注意
3つめのポイントになる、車両の大きさですが、変更前の車両と変更後の車両の大きさが同一であったり、小さい車両へ変更する際は問題になりません。
ただ、大きい車両へ変更する際は、車庫の収容能力(面積)と接道の道路幅員に注意が必要です。
車両の大きさ(幅・長さ)に対して、車庫は前後左右50cmずつ間隔を確保しなければなりませんので、車両サイズが大きくなる場合は、車庫の収容能力が足りているかどうかの確認が必要です。
また、接道は、車庫前面道路の道路幅員と車幅が、車両制限令違反になっていないか確認する必要があります。
運送業の運輸開始前に車両を変更する手続き
ここからは、運輸局での手続きについて解説します。
運輸局から受領された許可証の条件項目にこのような記載があることをご存知でしょうか。
運輸開始前には、運輸局長の承認がなければ事業計画又は事業施設概要書の記載内容を変更してはならない。
ここにも書かれているとおり、許可が出てから運輸開始前までの車両変更の具体的な手続きとしては、運輸局長の承認を得てから進めることになります。
この承認は、『一般貨物自動車運送事業の運輸開始前における事業計画変更届出書』と呼ばれる書類を使用して進めます。
そして、この届出書には、次の書類を添付します。
- 事業計画の新旧対照表(資金計画、使用車両の新旧)
- 変更後の車両に関する使用権原を証する書面など
変更後の車両に関する使用権原を証する書面とは、自社所有車両であれば、所有者・使用者が自社名義となっている車検証のコピーを、リース車両の場合はリース契約書を、車両を購入した場合は売買契約書などが該当します。
なお、車両を変更すると、資金計画も変更が必要になります。
具体的には様式2(事業開始に要する資金及び調達方法)の取得価格、自動車税、重量税、環境性能割、自賠責保険料、任意保険料を車両変更後の金額が変動しますので、変更後の車両にあわせて記載し、再計算を行います。
『一般貨物自動車運送事業の運輸開始前における事業計画変更届出書』は、営業所を管轄する運輸支局の輸送窓口に、正本・副本・事業者控えの計3部を提出します。
車両変更の手続きが不安なときは専門家への相談もご検討ください
冒頭にも書いたとおり、許可申請~運輸開始の間に車両を変更することは、可能な限り避けたい手続きではありますが、どうしても必要になるケースがあります。
車両の変更は、単に新しい車両を用意すればいいという簡単なものではなく、実は事業計画の多くの要素に影響を及ぼす手続きですので、安易に進めてしまうと、運送業許可自体を失いかねません。
「どうしても車両変更が必要になってしまったが、自社で手続きをするのは不安があるので、専門家のサポートを受けたい」という事業者様は、一度ご相談ください。
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