【専門家インタビュー】運送業許可のキホン: 運送業許可取得の要件
物流の根幹を支える運送業。新たに事業を立ち上げ、緑ナンバーのトラックで営業を開始するには、「一般貨物自動車運送事業」の許可を取得する必要があります。しかし、その許可要件は多岐にわたり、複雑な側面も少なくありません。
「許可を取りたいけれど、何から準備すればいいのか、そもそも要件を満たせるのか不安…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、運送業の許認可申請サポートで豊富な実績を持つ、行政書士の阪本浩毅先生にお話を伺い、許可取得に必要な要件について、初心者にも分かりやすく解説していただきます。特に、関東運輸局管内でのケースを想定してお話しいただきます。
── 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、運送業の許可を取得するための要件について、全体像から教えていただけますか?
阪本:はい、よろしくお願いします。運送業、特に不特定多数の荷主さんの荷物を運ぶ「一般貨物自動車運送事業」を始めるには、国土交通大臣の許可が必要です。これは、輸送の安全確保や、事業の健全な運営を促し、社会共通の利益を確保するための制度ですね。許可なく営業してしまうと、厳しい罰則(懲役や罰金)の対象となります。
── 安全を守るための大切なルールなのですね。許可取得には、具体的にどのような準備が必要になるのでしょうか?
阪本:許可要件は非常に細かく定められていますが、大きく分けると「人」「物」「お金」に関する3つの柱で考えると理解しやすいかと思います。これから、それぞれの柱について詳しく見ていきましょう。ちなみに、許可申請の準備から実際に緑ナンバーを取得して運輸を開始するまでの期間ですが、営業所や車庫探し、人員の確保といった準備期間も含めると、半年から1年程度かかるケースが多いですね。運輸局の審査自体にも最低5ヶ月ほどかかりますので、余裕を持ったスケジュールが必要です。
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「人」に関する要件:どんな人材が必要か?
── まずは「人」に関する要件について詳しく伺えますか? どのような人員や資格が必要になるのでしょうか。
阪本:はい。「人」に関する主な要件としては、まず申請者自身に関わるものとして、法令試験への合格と、欠格事由に該当しないこと。そして、事業運営に必要な人員として、5人以上の運転者、運行管理者、整備管理者の確保が挙げられます。
── 「法令試験」とは、具体的にどのような試験なのでしょうか? やはり難しいのでしょうか?
阪本:これは、運送事業に関連する法律知識を問う試験です。貨物自動車運送事業法などを中心に、50分で30問が出題され、8割、つまり24問以上の正解で合格となります。合格率は大体60%前後で推移していますね。決して簡単な試験ではなく、しっかり対策しないと一発合格は難しいでしょう。
── 受験するのは、社長さん自身ですか?
阪本:個人事業主の場合はご本人、法人の場合は運送事業を担当する常勤役員のうち1名が受験します。注意が必要なのは、受験できるタイミングです。許可申請をした後に運輸局から案内があって初めて受験できます。事前に受けることはできません。そして、もし2回不合格になると、申請そのものが却下されてしまうという、非常に厳しいルールがあります。
── 2回でアウトとは…プレッシャーが大きいですね。申請後に勉強となると、他の準備と並行して進める必要があり、かなり大変そうです。
阪本:おっしゃる通りです。開業準備で忙しい中での試験勉強は負担が大きいですが、避けては通れない道ですので、計画的に準備を進める必要があります。実務上は、2回不合格になる前に申請を取り下げるケースがほとんどですが、いずれにせよ時間と労力が無駄になってしまいますから、一発合格を目指したいところですね。
── 次に「欠格事由」についてですが、これは許可が取れない条件ということでしょうか?
阪本:その通りです。申請者や法人の役員が、過去に特定の法律違反を犯していたり、運送業の許可を取り消された経験があったりすると、一定期間(多くは5年間)は許可を取得できません。具体的には、1年以上の懲役・禁錮刑を終えてから5年経っていない、過去に運送業の許可を取り消されてから5年経っていない、許可取消し処分を逃れるために自主廃業してから5年経っていない、といったケースが該当します。また、申請者自身だけでなく、その親会社や子会社などが許可取消しを受けて5年以内という場合も該当することがあります。
── 法人の場合は、役員全員がチェックされるのですか?
阪本:はい、取締役や監査役といった役員全員が審査対象となります。うっかり見落として申請し、後から欠格事由が発覚すると、許可が下りないばかりか、それまでの準備が無駄になってしまいます。特に役員の人数が多い場合や、過去の経歴が複雑な方がいる場合は、申請前にしっかりと確認しておくことが非常に重要です。不安な場合は、専門家にご相談いただくのが確実ですね。
── 続いて、必要な人員についてです。「5人以上の運転者」が必要とのことですが、これはなぜでしょうか?
阪本:これは、一般貨物自動車運送事業の許可には、原則として最低5台の事業用車両(トラック)が必要と定められているためです。1台につき1名の運転者が必要という考え方ですね。この運転者は、日雇いや2ヶ月以内の短期契約ではなく、常用雇用が基本となります。もちろん、大型や中型など、運転する車両に応じた運転免許を持っていることが必須です。
── 申請の時点で、必ず5人揃っていないといけないのでしょうか? ドライバー不足の話もよく聞きますが…。
阪本:良い質問ですね。申請時点で5人全員を確保できていなくても、許可申請手続きを進めることは可能です。ただし、「許可が下りて、実際に運輸を開始するまでには5人以上確保できる見込みがある」という計画を示す必要があります。逆に言えば、許可が取れても、最終的に5人の運転者を確保できなければ、緑ナンバーが交付されず、事業を開始できないということになります。最近は特にドライバーの確保が難しくなっていますから、早めの人材募集や採用計画が肝心です。実際に、ドライバーが見つからず開業が予定より大幅に遅れてしまった、という事例も耳にします。
── 次に「運行管理者」ですが、これはどのような役割・資格なのでしょうか?
阪本:運行管理者は、ドライバーの乗務割の作成、休憩・睡眠施設の管理、点呼の実施、指導監督など、事業用自動車の安全運行を確保するために中心的な役割を担う責任者です。車両29台までは最低1名の運行管理者を、営業所に常勤で置く必要があります。資格を取得するには、国家試験である「運行管理者試験」に合格するのが一般的です。一定の実務経験と講習受講で資格を得るルートもありますが、条件が厳しく、該当する方は少ないですね。
── 運行管理者試験を受けるためにも、何か条件があるのですか?
阪本:はい、受験資格として、1年以上の事業用自動車の運行管理に関する実務経験があるか、または国土交通大臣が認定する基礎講習を修了している必要があります。こちらも、計画的に準備を進める必要がありますね。運行管理者も、申請時点で確保できていなくても、運輸開始までに選任できる見込みがあれば申請は可能です。
── もう一人、「整備管理者」も必要とのことですね。車両の整備を担当する方でしょうか?
阪本:その通りです。車両の日常点検や定期点検の実施計画、車両管理などを行う責任者です。整備管理者になるには、1級から3級までのいずれかの自動車整備士資格を持っているか、または整備工場や運送会社などで2年以上の整備に関する実務経験を積み、地方運輸局が実施する「整備管理者選任前研修」を修了する必要があります。
── 実務経験でなる場合、その証明はどのように行うのですか?
阪本:以前勤務していた会社などに、実務経験証明書を発行してもらう必要があります。これが意外とハードルになることがあって、例えば円満に退職していない場合や、その会社が既に廃業してしまっている場合など、証明書の入手が困難なケースがあります。そうなると、整備士資格を取得するしかなくなりますが、これは現実的ではありません。ですから、整備管理者の確保は、人的要件の中でも特に難しいポイントと言えるかもしれません。
── 運行管理者よりも確保が難しい場合もあるのですね。何か対策はありますか?
阪本:整備管理者は、運転者と兼務することが可能です。ですから、採用予定のドライバーの中に整備士資格を持っている方がいないか確認してみる、あるいは過去に整備管理補助者などの実務経験がある方がいないか探してみる、といった方法が考えられます。実際に、整備管理者の候補者が見つからず、急遽、整備士資格を持つドライバーを採用して要件をクリアしたというケースもありました。
「物」に関する要件:どんな施設や車両が必要か?
── 人員確保だけでも大変そうですが、次に「物」、つまり施設や車両の要件について教えてください。
阪本:はい。「物」に関する主な要件としては、営業所、休憩・睡眠施設、車庫、そして車両そのものが挙げられます。
── まず「営業所」ですが、事務所として使う場所ですね。どんな点に注意が必要でしょうか? 自宅の一部を使うことはできますか?
阪本:自宅の一部を営業所とすることも可能ですが、いくつか注意点があります。まず、その場所が法令に適合していることが大前提です。例えば、地目が「田」「畑」などの農地であれば、原則として営業所は設置できず、農地転用の手続きが必要になります。また、都市計画法で定められた用途地域によっては、営業所の設置が制限される場合があります。特に「第一種低層住居専用地域」など、住居系の地域では原則設置できないと考えた方がよいでしょう。
── 法律の確認が必要なのですね。建物の状態なども問われますか?
阪本:もちろんです。建築基準法に違反している建物、例えば違法建築などは営業所として認められません。よくあるケースとして、市街化調整区域にプレハブを置いて営業所にしようとしても、適切な許可や建築確認申請がなければ認められないことがあります。また、賃貸物件の場合は、運送業の営業所として使用することを貸主が承諾しているか、契約期間が十分に残っているか(目安として2年以上)などを確認する必要があります。社長個人の名義で借りている場合は、法人名義に変更する必要も出てきますね。個人と法人は別人格、別人物になりますので。
── 広さや設備に決まりはありますか?
阪本:明確な面積基準はありませんが、事務机や椅子、電話、パソコン、キャビネット、そして点呼時に使うアルコール検知器などを設置し、運行管理者などが常駐して業務を行えるだけの、現実的なスペースが必要です。物置のような場所では難しいでしょう。必要な備品が揃っているか、写真で確認して運輸局に提出する必要があります。また、後ほど説明する車庫との距離にも制限があります。原則として営業所と車庫は隣接していることが望ましいですが、離れていても、例えば東京都23区や横浜市・川崎市内であれば直線距離で20km以内、その他の関東の地域では10km以内といった基準があります。ただ、毎日の運行管理を考えると、できるだけ近い方が業務効率は良いですね。
── 次に「休憩・睡眠施設」について教えてください。これも必須なのでしょうか?
阪本:休憩施設は必ず必要です。運転者さんが休憩時間にリラックスできるスペースですね。さらに、ドライバーさんが業務の都合上、営業所や車庫で睡眠をとる必要がある場合(例えば、長距離運行で自宅に帰っても十分な休息時間が確保できない場合など)は、睡眠施設の設置も義務付けられます。これらの施設は、営業所または車庫のどちらかに併設する必要があります。
── 設備などの要件はありますか?
阪本:休憩施設であれば、椅子やテーブル、ソファなどがあれば十分ですが、睡眠施設の場合は、一人あたり2.5平方メートル以上の広さを確保し、布団やベッドなどを備える必要があります。また、営業所と同じスペースに設ける場合は、パーテーションなどで明確に区切って、休憩・睡眠に専念できる環境を整えることが推奨されます。こちらも、適切に利用できる状態か写真で確認されます。
── そして「車庫」ですが、トラックを停めておく場所ですね。これも色々と条件があるのでしょうか? 近所の月極駐車場などではダメですか?
阪本:月極駐車場が絶対にダメというわけではありませんが、運送業の車庫として認められるためには、いくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。まず、原則として営業所に併設されていること。併設できない場合は、先ほどの距離制限の範囲内である必要があります。広さについては、申請する全ての事業用車両が駐車できるだけでなく、駐車した状態で車両の点検ができるよう、車両と壁、車両と車両の間にそれぞれ50cm以上の間隔を確保できるスペースが必要です。
── 車両と車両の間に50cmですか。かなり余裕が必要ですね。
阪本:そうですね。一般的な目安として、大型トラックなら1台あたり38平方メートル程度の広さが必要とされています。また、車庫に面している道路の幅(前面道路幅員)も重要です。車両制限令という法律に抵触しない必要があり、原則として道路幅が6.5m以上ないと、大型車両などの車庫として認められない可能性があります。ただし、6.5m未満でも、個別に調査することで認められるケースもあります。
── 道路幅が広くても、注意点はありますか?
阪本:はい、道路幅が十分でも、電柱の位置が悪かったり、道路の形状で見通しが悪かったりして、実際には安全に車両の出入りができないような場所は車庫としては適していないと考えます。ですから、必ず現地を確認することが重要です。書類上は問題なさそうに見えても、実際には使えないというケースは少なくありません。例えば、広い土地を見つけたけれど、農地だったので転用手続きに時間がかかったり、前面道路の幅が足りずに別の場所を探し直したり、といったことはよくあります。
── 市街化調整区域でも車庫は設置できますか?
阪本:はい、営業所とは異なり、市街化調整区域でも地目が宅地や雑種地などであれば、車庫として使用することは可能です。ただし、他の運送会社が既に許可を受けている車庫を、そのまま重ねて使用することはできません。その会社が車庫の変更手続きなどを完了した後でないと、申請はできません。このように、車庫探しは多くの要件をクリアする必要があり、許可申請の中でも特に難航しやすいポイントの一つです。余裕を持ったスケジュールで、慎重に物件調査を進めることを強くお勧めします。
── 最後に「車両」そのものについてですが、最低5台必要で、軽自動車はダメということですね。
阪本:その通りです。車検証の「用途」欄が「貨物」となっている車両が最低5台必要です。4ナンバーなどの小型貨物車でも構いませんが、軽トラックや軽バンなどの軽自動車は、一般貨物自動車運送事業の車両としてはカウントできません(貨物軽自動車運送事業という別の事業になります)。牽引車(トラクタ)と被牽引車(トレーラ)を使用する場合は、そのセットで1台と数えます。
── 車両は購入しないといけませんか? リースは可能でしょうか?
阪本:リース車両でも全く問題ありません。重要なのは、申請者がその車両を使用する権限を持っていることです。車検証の「使用者」欄に申請者の名前(法人の場合は法人名)が記載されていれば大丈夫です。リースの場合、所有者はリース会社になりますが、使用者は申請者になりますので要件を満たします。また、申請時にまだ現車がなくても、売買契約やリース契約が締結されていれば、使用権限があると認められます。
── 中古車でも大丈夫ですか? 注意点はありますか?
阪本:中古車でも問題ありません。年式に関する規制も特にありません。ただし、注意点としては、営業所を置く地域によっては、「NOx・PM法」という排出ガス規制に適合した車両でないと登録できない場合があります。これは、大都市圏とその周辺地域が対象となります。
── NOx・PM法とは何でしょうか?
阪本:窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出量を規制する法律です。対象地域で使用するトラックは、この法律の基準を満たしている必要があります。適合しているかどうかは、車検証の備考欄を見れば確認できます。中古車を購入する際は、この点を必ず確認してください。また、年式の古い車両は、故障のリスクや修理費が高くなる可能性も考慮して、慎重に選ぶ必要がありますね。
「お金」に関する要件:どれくらいの資金が必要か?
── さて、最後に「お金」に関する要件について教えてください。自己資金がかなり重要だと伺いましたが、どれくらい必要になるのでしょうか?
阪本:はい、運送業の許可を取得するには、事業開始に必要な資金を自己資金として用意できることを証明する必要があります。この「必要な資金」は、かなり細かく算出方法が決められています。
── どのように計算するのですか?
阪本:大きく分けて、①設備資金(車両、土地、建物などにかかる費用)、②運転資金(人件費、燃料費、修繕費など)、③その他の費用(保険料、税金、登録免許税など)を合計した金額になります。具体的には、車両や不動産を購入する場合はその取得価格(分割なら頭金+1年分の割賦金)、賃貸の場合は敷金などの初期費用+1年分の賃料、保険料や税金は1年分、そして人件費や燃料費などの運転資金は6ヶ月分を見積もる必要があります。最後に、許可取得時に納付する登録免許税12万円も加えます。
── 運転資金だけで6ヶ月分ですか! かなりまとまった額になりそうですね。
阪本:そうですね。事業規模にもよりますが、例えば車両5台で、営業所や車庫を賃貸で借りる場合、人件費や諸経費を含めると、必要な自己資金の総額が2,000万円から3,000万円近くになることも珍しくありません。もちろん、自己所有の不動産や車両があれば、その分、必要な額は抑えられますが、いずれにしても、まず最初に「どれくらいの自己資金を用意できるか」を検討することが、許可取得の現実性を測る上で非常に重要になります。
── その自己資金は、どのように証明するのでしょうか? タンス預金ではダメですか?
阪本:原則として、申請日以降、許可が下りるまでの間、継続して銀行口座に預けておく必要があります。そして、申請時と、審査の途中で、銀行が発行する「残高証明書」を提出して証明します。残念ながら、会社の金庫に保管している現金などは、原則として自己資金とは認めてもらえません。必ず、申請する会社名義の銀行口座の残高証明書が必要です。
── 自己資金が足りない場合、融資を受けることはできますか?
阪本:はい、銀行などからの借入金も自己資金に含めることは可能です。ただし、非常に重要な注意点があります。それは「融資の実行タイミング」です。許可申請を行う前に、融資が実行されて会社の口座に入金されている必要があります。金融機関によっては、「許可が下りてからでないと融資を実行できない」あるいは「申請書が運輸局に受理されてから実行する」というケースがあります。この場合、その融資額は許可申請時点での自己資金としてはカウントできません。実際に、融資のタイミングが合わずに自己資金不足となり、申請が難しくなったという事例もありますので、融資を利用する場合は、金融機関と実行時期をしっかり確認することが不可欠です。
── もう一つ、「損害賠償能力」という要件もありましたが、これは何でしょうか?
阪本:これは、万が一、輸送中に事故を起こしてしまった場合に、被害者への損害賠償をきちんと行える能力があるか、ということです。具体的には、事業用自動車すべてについて、任意保険に加入する計画があることを示さなければなりません。補償額にも最低基準があり、対人賠償は無制限、対物賠償は最低でも200万円以上の保険に加入する必要があります。
── 最低基準は対物200万円ですが、実際にはもっと手厚くするケースが多いのでしょうか?
阪本:おっしゃる通りです。対物200万円というのはあくまで最低ラインですので、実際には対人・対物ともに「無制限」で加入される事業者さんがほとんどです。また、タンクローリーで危険物を運ぶような場合は、さらにそのリスクに対応した特別な保険への加入計画も必要になります。この任意保険料も、先ほどの自己資金計画に1年分を計上する必要がありますので、車両が決まった段階で、保険会社から事業用(緑ナンバー)としての見積もりを取っておく必要があります。
まとめ:許可取得のハードルと成功のポイント
── 人、物、金、それぞれの要件を詳しく伺うと、許可取得は本当に準備が大変だということがよくわかりました。阪本先生がこれまで多くの事業者さんを見てこられた中で、特にハードルが高いと感じられるのはどのあたりでしょうか?
阪本:そうですね、やはり一番のハードルは、多くの場合「自己資金」の確保ですね。ある程度まとまった資金が必要になる点は、どうしても避けられません。次に難しいのが「車庫」探しでしょうか。特に首都圏では、広さや前面道路幅員などの条件を満たす物件がなかなか見つからず、苦労される方が非常に多いです。ですから、効率的な探し方としては、まず条件に合う車庫を見つけてから、その周辺で営業所の要件を満たす物件を探す、という順番が良いかもしれません。その次に「営業所」や「車両」の確保が続く、という印象です。
── 融資のタイミングも、自己資金に関わる難しい点ですね。
阪本:はい。特にこれから起業される方がよく検討される日本政策金融公庫の創業融資などは、原則として許可取得後の融資実行となるケースが多いです。そのため、許可申請時の自己資金としては活用しにくいという点は、注意が必要です。
── これから運送業許可を目指す方へ、最後にアドバイスをお願いします。
阪本:まず、運送業の許可取得は、準備開始から考えると半年、1年とかかることも珍しくありません。思い立ってすぐに始められるものではないので、許可要件を正確に理解し、計画的に、そして粘り強く準備を進めることが何よりも重要です。また、苦労して許可を取得しても、それはあくまでスタートラインです。法令を遵守し、安全運行を徹底することはもちろん、ドライバーの働き方改革への対応(いわゆる2024年問題)や、環境問題への配慮、DX化の推進など、運送業界を取り巻く環境は常に変化しています。こうした変化に柔軟に対応し、事業を継続していく努力が求められます。
── 専門家への相談も有効でしょうか?
阪本:もちろんです。許可要件の確認や書類作成、関係各所との調整など、許可申請には多くの時間と労力がかかります。ご自身で全て行うのは大変ですので、我々のような行政書士などの専門家をうまく活用することも、スムーズな許可取得と事業開始への近道だと思います。何よりも、運送業は社会を支える重要なインフラです。安全第一の意識と、社会に貢献するんだという気概を持って、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。
── 本日は、運送業許可の要件について、非常に分かりやすく解説いただき、ありがとうございました。
阪本:こちらこそ、ありがとうございました。
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