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物流関連2法一部改正に伴う一般貨物自動車運送事業者への新たな規制

物流関連2法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律・貨物自動車運送事業法)が一部改正され、2024年5月15日に法律が公布されました。現在は法律の施行に向けて、細かい運用の検討が進められております。(報道発表資料:「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定 – 国土交通省

※流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律は、物資の流通の効率化に関する法律に法律名が改められます。

※本記事は、2024年9月23日時点で公表されている情報をもとに執筆しています。

法改正の背景

物流関連2法の一部改正は、輸送力不足の解消を目指すために行われます。輸送力不足を解消するため、荷待ち・荷役等時間の短縮、積載率の向上を目指した法改正です。

運転者の拘束時間(労働時間)が年960時間の上限規制が適用され、さらに改善基準告示の改正により拘束時間等の規制が強化されました。何も対策を講じないと運転者の待遇はさらに悪化し、運転者不足が加速します。

そこで、一般貨物自動車運送事業者が適正な運賃を収受できる環境を整備するため、運送役務の内容と対価を明確にするとともに、多重下請け構造の健全化を目指すために、物流関連2法は改正されるのです。

2024年5月に公布された物流関連2法の改正では、すべての一般貨物自動車運送事業者に対しての規制と、一般貨物自動車運送事業者の中でも、一定規模の事業者が対象である規制と、貨物自動車利用運送(庸車)を行っている事業者への規制と分かれております。

すべての一般貨物自動車運送事業者への新たな規制

すべての一般貨物自動車運送事業者が対象となる規制は大きくわけて二つあります。一つは貨物自動車運送事業法の規制であり、二つ目は流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の規制です。

貨物自動車運送事業法関係

真荷主(自らの事業に関して貨物自動車運送事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、貨物自動車運送事業者以外のもの)および一般貨物自動車運送事業者には、運送契約を締結するときは、運送の役務の内容及びその対価等を書面に記載して相互に交付する義務が生じます。

運送契約の相手方の承諾を得て、書面に代えて電磁的方法により提供することも可能とされています。

流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律関係

一般貨物自動車運送事業者は、その雇用する運転者1人あたりの1回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るための措置を講ずるよう努める義務が生じます。

一般貨物自動車運送事業者の努力義務に対して、国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者の判断の基準となるべき事項を定めることとされています。

この判断の基準は、現在、国土交通省・経済産業省・農林水産省が開催する合同会議の中で検討が進められており、2024年8月に開催された合同会議の中で示された取りまとめ素案の中で、貨物自動車運送事業者等の判断基準について記されております。

運転者1人あたりの1回の運送ごとの貨物の重量増加を図るための、一般貨物自動車運送事業者の取組みについて具体的に記載されているのでここで紹介いたします。

貨物自動車運送事業者等の判断基準等について(改正物効法第35条)

貨物自動車運送事業者等の判断基準等については、以下の事項を取組の例として盛り込むこととする。なお、以下の事項による取組が目標達成に対し業界特性その他の事情により有効でない場合は、これによらないことも可能とする必要がある。

① 積載率の向上等に関する事項については、以下の事項とする。

  •  複数の荷主の貨物の積合せにより輸送網を集約すること。
  •  過疎地域などトラックドライバーが不足している地域において配送を共同化すること。
  •  求貨求車システム等を活用した帰り荷(復荷)の確保により、実車率の向上を図るこ22 と。
  •  配車・運行計画の最適化に資するシステムを導入すること。
  •  運送ごとの貨物の総量の増加のため、輸送量に応じた大型車両の導入を行うこと。

② ①及び関係事業者の取組の実効性確保に資する事項については、以下の事項とする。

  • トラックドライバーの荷待ち・荷役等時間を把握し、荷主等が荷待ち・荷役等時間を把握することが難しい場合に情報提供すること。なお、トラックドライバーの荷待ち・荷役等時間の把握に当たっては、デジタルタコグラフ等のデジタル技術の活用に努めること。
  • 関係事業者(荷主、倉庫業者等)がトラック予約受付システムを導入している場合は、そのシステムを利用すること。
  • 荷主が指示した時刻・時間帯よりも理由なく必要以上に早くトラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に到着しないよう、効率的な配車・運行に努めること。
  • 取引先に対して、標準仕様パレットの活用、共同輸配送のための個建て運賃の導入、リードタイムに応じた運賃設定などの提案を行うこと。
  • 関係事業者との連携を図るとともに、必要に応じて取引先に対して協力を求めること。
  • 物流情報標準ガイドラインへの準拠など物流データの標準化に取り組むこと。
  • テールゲートリフターの導入、荷捌き施設の整備など積載率の向上等に伴うトラックドライバーの積卸し作業の負荷低減を図ること。
  • 積載率の向上等に当たっては、トラックの過積載など事業の正常な運営が阻害されないよう、関係法令を遵守すること。

(出典:国交省・経産省・農水省合同会議配布資料)

国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者が雇用する運転者1人あたりの1回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るための措置の的確な実施を確保するため必要があると認めるときは、貨物自動車運送事業者等に対し、当該措置の実施について必要な指導及び助言をすることができるとされています。

ここまでは、すべての一般貨物自動車運送事業者が対象となる規制です。

一年度の輸送能力が一定以上である事業者に対しての規制(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律関係)

国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者のうち、年度の輸送能力が一定以上であるものを、その雇用する運転者1人あたりの1回の運送ごとの貨物の重量を特に増加させる必要がある者として指定するとしています。この指定を受けた一般貨物自動車運送事業者は、「特定貨物自動車運送事業者」と呼ばれます。

特定貨物自動車運送事業者となる基準は、国土交通省・経済産業省・農林水産省が開催している合同会議の中で検討中ではありますが、2024年8月に開催された合同会議では、保有車両台数150台以上の一般貨物自動車運送事業者を特定貨物自動車運送事業者として指定することを検討しています。

保有車両台数150台以上といのは、一般貨物自動車運送事業者の上位790社程度が特定貨物自動車運送事業者として指定を受けることになります。

特定貨物自動車運送事業者は、定期に、中長期計画を作成し、所管大臣に提出しなければなりません。そして、特定貨物自動車運送事業者は、毎年度、措置の実施の状況に関して、国土交通省令で定める事項を報告する義務が生じます。

所管大臣は、特定貨物自動車運送事業者の措置の実施に関する状況が、所管大臣が定める判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であるときは、その特定貨物自動車運送事業者に対して勧告を行います。

勧告に従わなかったときは、その旨を公表し、正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは措置をとるべきことを命令できるとしています。

貨物自動車利用運送を行う場合の規制(貨物自動車運送事業法関係)

貨物自動車利用運送、いわゆる「庸車(ようしゃ)」を使用する場合にも新しい規制がはじまります。

一般貨物自動車運送事業者は、自らが引き受ける貨物の運送について他の一般貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、健全化措置を講ずるよう努力義務が生じます。

一般貨物自動車運送事業者が講ずる健全化措置は、以下の3項目とされています。

  1. 利用する運送に要する費用の概算額を把握した上で、その概算額を勘案して利用の申込をすること
  2. 荷主が提示する運賃・料金が、利用する運送に要する費用の概算額を下回る場合は、荷主に対して運賃・料金について交渉したい旨を申し出ること
  3. 利用する一般貨物自動車運送事業者が、さらに他の一般貨物自動車運送事業者の行う運送を利用する場合に、2以上の段階にわたる委託の制限その他の条件を付すること

そして、一般貨物自動車運送事業者は、自らが引き受けた貨物の運送について他の一般貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、その他の一般貨物自動車運送事業者に対し、運送の役務の内容及びその対価等を記載した書面を交付する義務が生じます。

この書面についても、相手方の承諾を得て、書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することが可能です。

貨物自動車利用運送の規模が大きい場合の規制(貨物自動車運送事業法関係)

貨物自動車利用運送を行う一般貨物自動車運送事業者(その行う貨物自動車利用運送の規模が一定以上であるもの)は、運送利用管理規程を定め、国土交通大臣への届出義務が生じます。運送利用管理規程の届出義務が生じる一般貨物自動車運送事業者を、「特別一般貨物自動車運送事業者」と呼びます。

さらに、特別一般貨物自動車運送事業者は、運送利用管理規程の届出後、速やかに、その事業における健全化措置の実施及びその管理の体制を確保するため、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者のうちから、運送利用管理者一人を選任しなければなりません。

真荷主から引き受けた貨物重量が一定以上の元請事業者への規制(貨物自動車運送事業法関係)

事業者全体でなくても、真荷主から引き受けた貨物重量が一定以上である場合で、その貨物の運送に庸車を使用する場合にも規制が生じます。

マスコミなどで取り上げられて実運送体制管理簿の作成に関する規制は、すべての一般貨物自動車運送事業者が対象ではありません。真荷主から引き受けた貨物の重量が一定以上である元請一般貨物自動車運送事業者が、実運送体制管理簿の作成義務が生じます。実運送体制管理簿の作成義務が生じる元請一般貨物自動車が真荷主から引き受ける貨物重量の詳細は今後政令で定めることになります。

  1. 一般貨物自動車運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送(貨物の重量が一定以上であるものに限る)について、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用したときは、運送体制の明確化を図るため、真荷主から引き受けた貨物の運送ごとに、実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号又は名称等を記載した実運送体制管理簿を作成し、引受貨物の運送完了日から1年間、営業所に備え置かなければならない。
  2. 実運送体制管理簿を作成する一般貨物自動車運送事業者(元請事業者)は、利用する運送を行う他の貨物自動車運送事業者に対し、元請連絡事項を通知しなければならない
  3. 元請事業者を除く一般貨物自動車運送事業者は、引き受けた貨物の運送について、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、その他の貨物自動車運送事業者に対して、次の事項を通知しなければならない
  4. 貨物自動車運送事業者は、他の貨物自動車運送事業者から貨物の運送を引き受け、2又は3の通知を受け、かつ、実運送を行う時は、元請事業者に対し、貨物の真荷主ごとに、次の事項を通知しなければならない
  5. 真荷主は、貨物の運送を委託した元請事業者に対して、業務取扱時間内は、実運送体制管理簿の閲覧の請求が可能

真荷主・元請事業者・実運送事業者への法規制は、多重下請構造を是正するために行われます。

国土交通省近畿運輸局が作成した資料の中に、この3者に対する規制が分かりやすく示されている図がありましたので参考までに引用いたします。

一般貨物自動車運送事業の多重下請構造是正に対する規制を示した図

(出典:近畿運輸局作成資料)

これらの規制が始まる時期について

流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部改正の、特定貨物自動車運送事業者の指定や指定を受けた特定貨物自動車運送事業者への規制は、公布日(2024年5月15日)から起算して2年を超えない範囲内において政令が定める日より規制が始まるとされています。

特定貨物自動車運送事業に関する法規制以外は、公布日(2024年5月15日)から起算して1年を超えない範囲内において政令が定める日より規制が始まるとしています。

政令を定める準備をしているため具体的な規制開始日は決まっておりませんが、一般貨物自動車運送事業者への新たな規制は、2025年春頃より段階的に始まる予定です。

荷待ち・荷役時間の短縮、積載率の向上、そして、多重下請構造の是正を行うために物流関連2法の一部改正が行われました。物流の生産性を向上させ、これを通じた適正運賃の収受と運転者の処遇改善が着地点です。

現在は、改正法の運用について、検討が進められています。

※本記事は、2024年9月23日時点で公表されている情報をもとに執筆しています。

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