運送業許可の整備管理者について
トラック運送業許可を取るためには運行管理者だけじゃなくて整備管理者も必要なのでしょうか?
そのとおりです。
昔から車が好きで色々いじってきたから、私が整備管理者になればいいですよね?
運行管理者とも兼任できると聞きましたし。
残念ながら、整備管理者にはなれない可能性が高いですよ。
運行管理者と同様に整備管理者になるためにも色々な条件をクリアしなければいけませんので。
それでは今回は整備管理者についてお話しますね。
トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を取得するためには、自動車の点検や整備、車庫の管理を行う整備管理者の選任が必要になります。
整備管理者は、運行管理者と同様に指定すれば誰でもなれるというわけではなく、一定の要件を満たした人しかなることができません。
この記事では、運送業許可取得のために不可欠な整備管理者について解説します。
※規制のルールは特に言及の無い限り関東運輸局管内を前提に説明しています。
Contents
整備管理者の役割
そもそも論になりますが、トラック運送業の営業所において、整備管理者の選任が必要になるのでしょうか。
本来、運送事業に使用する車両の点検・整備そして車庫の管理は、事業者が自主的に安全確保や環境保全を図るための注意を払うべきです。
とはいえ、使用する車両台数が多い場合には、管理責任体制が曖昧になりがちであり、さらに、事故の際に被害が甚大となる自動車を用いる場合には、専門的知識をもって車両管理を行う必要があります。
そのことにより、整備管理者を選任して、事業者に代わって車両管理を行うことにより、点検・整備に関する管理・責任体制を確立して、自動車の安全確保や環境保全を図る目的があります。
法令上、整備管理者の役割は次のように規定されています。
- 日常点検(道路運送車両法第47条の2第1項及び第2項)の実施方法を定めること
- 日常点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること
- 定期点検(道路運送車両法第48条第1項)を実施すること
- 日常点検・定期点検のほか、随時必要な点検を実施すること
- 日常点検・定期点検・随時必要な点検の結果、必要な整備を実施すること
- 定期点検及び5.の整備の実施計画を定めること
- 点検整備記録簿(道路運送車両法第49条第1項)その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること
- 自動車車庫を管理すること
- 上記の1.~9.に掲げる事項を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、又は監督すること
整備管理者になるためには?
運送業の運行管理者は、事業用自動車の点検・整備や車庫の管理を行います。
具体的には、日常点検などの車両の点検の管理や車両整備の実施計画の策定、点検整備記録簿等の記録簿の管理、車庫の管理などが主な業務内容になります。
運送業の整備管理者になる方法は以下の2つです。
- 2年以上の実務経験を積み整備管理者選任前研修を修了する(こちらのケースの方が多いです。)
- 1~3級の自動車整備士の資格を取得している
実は法令にはもうひとつの方法は規定されているのですが、国交省は「現時点において、該当するものは想定していない」としています。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
2年以上の実務経験+研修
2年以上の実務経験
整備管理者になるための2年以上の実務経験とは、どのような内容のものでしょうか。
もちろん何でもよいというわけではなく、大きく分けて以下の2つの種類があります。
- 整備の管理を行おうとする自動車と同じ種類(二輪自動車以外か二輪自動車かの2種類)の自動車の点検もしくは整備に関する実務経験
- 整備の管理を行おうとする自動車と同じ種類の自動車の整備の管理に関する実務経験
1もしくは2の実務経験が2年以上あれば、整備管理者に選任されるための実務経験として認められるということになります。
ただし、「同じ種類の自動車」に関する実務経験でなければなりませんので、二輪自動車の整備経験のみでは、トラックなどの車両の整備管理者にはなれないことに注意が必要です。
そして、1と2の内容をさらに詳しく紹介すると、1の「点検もしくは整備に関する実務経験」というのは、
- 整備工場、特定給油等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(技術上の指導監督的な業務の経験を含む)
- 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験
- 整備責任者として車両管理業務を行った経験
のことを言います。
また、2の「整備の管理に関する実務経験」というのは、
- 整備管理者の経験
- 整備管理者の補助者として車両管理業務を行った経験
のことを言います。
実務経験は、運輸局にもよりますが、白ナンバー車両の整備では一切認められないということではありませんので、白ナンバー車両の整備経験しかないという場合には、一度所轄運輸支局の整備担当窓口に相談されることをおすすめいたします。
実務経験証明書
実務経験を2年以上積んだとしても、整備管理者に選任されるためには、その実務経験を、在籍していた会社に証明してもらわなければいけません。
実務経験が1社で2年に足りないときには、複数の会社での期間を合算することができます。
以前は、実務経験を証する書面として、実務経験証明書に、在籍していた会社などの印鑑を貰う必要がありました。
昨今の行政手続きの捺印省略の動きを受けて、実務経験証明書への捺印も不要になりました。
とはいえ、虚偽の実務経験を記載することは、認められないことは言うまでもないでしょう。
整備管理者選任前研修
整備管理者に選任されるためには、2年以上の実務経験に加えて、各運輸支局が開催している整備管理者選任前研修を受講して修了する必要があります。
整備管理者選任前研修は、各運輸支局が年に数回開催していて(運輸支局によって開催回数は違います。)、研修の時間は2時間程度で特に試験などはありません。
申込みが開始されてから満員になるのが早いので、なるべく早めに申込みましょう。
どこの運輸支局で受けた研修でも構いませんので、運送業許可申請をする運輸支局と別の場所で受講していても問題ありません。
これは整備管理者の定期研修も同様です。
講習を受けて修了証(運輸支局によって証明書だったり手帳だったりします。)をもらい、実務経験証明書と修了証が揃えば整備管理者に選任されることができるようになります。
なお修了証を紛失した場合でも、整備管理者選任前研修を受講した運輸支局で再発行してもらうことができます。
ちなみに、2年の実務経験が無くても整備管理者選任前研修を受講することは可能ですので、将来的に整備管理者になる可能性がある場合には、早めに研修を受けておくと良いでしょう。
1~3級の自動車整備士の資格
これまで説明してきたように、資格が無い場合には2年以上の実務経験と整備管理者選任前研修の受講を経なければ整備管理者に選任されることができませんが、1~3級の自動車整備士の資格があれば(技能検定に合格している)整備管理者に選任されることができます。
具体的には以下の資格のうちのどれかひとつがあればOKです。
- 一級大型自動車整備士
- 一級小型自動車整備士
- 一級二輪自動車整備士
- 二級ガソリン自動車整備士
- 二級ジーゼル自動車整備士
- 二級自動車シャシ整備士
- 二級二輪自動車整備士
- 三級自動車シャシ整備士
- 三級自動車ガソリン・エンジン整備士
- 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士
- 三級二輪自動車整備士
とは言え、3級自動車整備士であっても、機械学科出身だったり他の資格を持っていたりしない場合には、整備作業の実務経験が1年以上必要になります(詳しくは国交省の自動車整備士の受験資格がまとめられているページをご参照ください。)し、短期間で取得できる資格ではありませんので、運送業許可の取得に着手してから「自動車整備士の資格を取ろう」というのはなかなか難しいです。
整備管理者は1名いればよいのか
法令上は各営業所に1名いれば良いとされているので、営業所に車両が何台あっても1名でOKなのですが、現実的に1人で何百台といった多数の車両の整備管理をするのは無理があるので、実際に管理可能な範囲で整備管理補助者を選任するなどする必要があるでしょう。
また、1人で複数の事業者の整備管理者になることはできませんので、以前在職していた会社で整備管理者になっているような場合には、そちらの会社から解任してもらわなければいけません。
ちなみに、同じ事業者内であっても複数の営業所の整備管理者を兼任することは現実的にはできないと考えておいた方がいいです。
それとは異なり、同じ営業所の整備管理者と運行管理者は兼任することができます。
なお、運送業の整備管理者の外部委託はグループ企業内で一定の条件を満たしているケース以外では禁止されていますので注意しましょう。
整備管理者補助者
整備管理者に関しても、運行管理者と同様に補助者を選任することができます。
整備管理者補助者は日常点検に関する業務のみ行うことができます。
補助者は、以下のどちらかの条件を満たした人から選任することができます。
- 整備管理者になることができる人
- 整備管理者が研修等を実施して十分な教育をした人
これらの他、補助者に対する一定の研修や情報提供などを行うことが必要になります。
まとめ
整備管理者は、運行管理者と並んで運送業許可を取得するために不可欠な人員です。
運行管理者は試験に合格しれば選任要件を満たすことができますが、整備管理者になるために、これから整備士資格の取得を目指すのは現実的な方法ではないと思います。
整備士資格を保有していない場合は、実務経験2年以上と選任前研修修了で選任要件を満たすことができますが、実務経験を積まれている方が社内にいらっしゃらない場合があります。
私どもでは、そのため運送会社を立ち上げる際には、運行管理者よりも整備管理者が確保できてないと、許可取得の大きなハードルが高くなのものだと考えております。
原則として外部委託もできませんので、運送業許可を取得する際には、整備管理者を確保がポイントになるでしょう。
シグマでは、整備管理者や補助者の配置なども含めて、運送業許可取得、維持の観点から運送業者様の事業全体をサポートしています。
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