運送業許可取得に必要な自己資金

運送業許可を取るためには、お金についても要件があると聞いたのですが、大体いくらくらい必要なものなのでしょうか。

それぞれのケースによって必要な自己資金は大きく変わってきてしまうので一概に言うのはなかなか難しいですね。

大体の目安でもいいのですが。

本当にざっくりとしたお話ですので必ずしも貴社のケースに当てはまるとは言えませんが、最低でも2,500万円以上の自己資金を確保しなければならないケースがほとんどです。

けっこう高額になるんですね。全額現金で用意しないといけませんか?

基本は預貯金ということになっています。

見せ金のような形で一時的に銀行に入れておけば大丈夫なんですか?

実はそれでは許可は取れないんです。
他にも色々なルールがありますので、詳しく見ていきましょう。

トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を取得するためには、一定以上の自己資金を持っていることが必要です。
なぜ「一定以上」というぼんやりとした言い方をしてるかと言いますと、必要な自己資金の額は、事業者ごとに違ってくるためです。
例えば、営業所・車庫の土地・建物を自社で所有している事業者さんと、営業所・車庫の土地・建物を賃貸で借り受けている事業者さんでは、自己資金の額が全く違ってきます。
この記事では、運送業許可を取得するために必要な自己資金について、計算方法や注意点などを説明します。
※規制のルールは特に言及の無い限り関東運輸局管内を前提に説明しています。
資金に関するルール
運送業の許可を取得するためには、事業計画をもとにして算出した、事業を開始するために必要な資金(所要資金)がしっかりと用意できなければいけません。
この所要資金は以下のように分類されます。
- 車両費
- 建物費
- 土地費
- 保険料
- 各種税
- 運転資金
- 登録免許税税
これらの費用を、次で説明するように合算したものが所要資金で、これ以上の自己資金が必要になります。
そして、ここが最も気をつけなければいけない点ですが、自己資金は、運送業の許可を申請した日から、許可が出る日までの期間中ずっと所要資金よりも多い状態で確保していなければなりません。
期間中に下回ってしまうと、運送業許可の取得要件を満たすことができなくなってしまいますので、許可申請自体を取り下げることになってしまいます。
こうなってしまうと、大きなタイムロスになってしまのはもちろんのこと、場合によっては事業開始前に銀行からの融資の返済が始まってしまったり、最悪のケースでは、再び同じ額を用意することができなくなって許可が取れなくなってしまうということにもなりかねません。
所要資金の内訳
さきほど紹介した所要資金ですが、その内訳はどのようなものでしょうか。
少し細かいですが、ひとつずつ説明していきます。
車両費
車両を購入する場合には、車両の取得価格です。ただし、分割払いで購入する場合は、頭金と1年分の返済費用で計算します。
またリースの場合は、1年分のリース料などで計算します。
建物費
営業所、車庫、休憩・睡眠施設などの、事業に使う建物を購入する場合には、建物の取得価格です。ただし、分割払いで購入する場合は、頭金と1年分の返済費用で計算します。
また賃貸の場合は、1年分の賃借料と敷金などで計算します。
土地費
営業所、車庫、休憩・睡眠施設などの、事業に使う土地を購入する場合には、土地の取得価格です。ただし、分割払いで購入する場合は、頭金と1年分の返済費用で計算します。
また賃貸の場合は、1年分の賃借料と敷金などで計算します。
保険料
以下の3つを合計して計算します。
- 自賠責保険料または自賠責共済掛金の1年分
- 任意保険料または交通共済の掛金の1年分(対人無制限・対物200万円以上で賠償できる保険に加入しなければいけません。)
- 危険物を取扱う運送の場合は、その危険物に対応する賠償責任保険料の1年分
各種税
以下の3つを合計して計算します。
- 1年分の自動車税と自動車重量税
- 環境性能割(旧:自動車取得税)
運転資金
主に以下の4つを合計して計算します。
- 人件費の6ヶ月分
- 燃料油脂費の6ヶ月分
- 修繕費の6ヶ月分
- 什器備品の取得価格
- その他の経費の2ヶ月分
登録免許税
許可取得に納付する12万円を計上します。
人件費には、役員報酬、給与の他にも各種手当、賞与の一部、社会保険料などの法定福利費、給与などの2%で計算した厚生福利費が含まれます。
その他の経費には、旅費、会費議、水道光熱費、通信費、運搬費、図書費、印刷費広告宣伝費などが含まれます。その他経費は2ヶ月分の計上となっています。
自己資金に含まれるもの

預貯金で判断するのが基本です。
- 運送業許可申請日
- 申請後の運輸局から指定された日
この2つの時点の残高証明書で自己資金の残高を証明します。
残高証明書は許可申請会社名義の銀行口座のものが必要になります。社長個人の銀行口座のものはノーカウントです。
銀行口座は複数であっても構いませんが、全ての口座の残高証明書が必要になります。
残高証明書は、必ず口座番号の記載があるものをご準備ください。
2回目の残高確認までの間に預金を出し入れすること自体は可能ですが、2回目の時点で実は所要資金を割り込んでいたということにならないように注意することをオススメしています。
また、預貯金だけでは所要資金に足りない場合には、売掛金などの流動資産も含められるとされています。
この場合には、預貯金と同じタイミングでの、「見込み貸借対照表」などで流動資産の額を証明します。
ただし、流動資産については、認められやすさが運輸局ごとに異なるため、自己資金に流動資産を含めたい場合には、事前に運輸局と協議しておく必要があります。
認められる自己資金の範囲
さきほど説明したように、自己資金は2回チェックを受けるタイミングがありますが、2回目のチェックは、申請時に申告した自己資金が確保されているかの確認であるため、1回目と2回目の確認の間に銀行口座の残高が増えたとしても、自己資金として認められるのは1回目の残高までです。
逆に減ってしまっている場合には、減ったあとの額で計算されることになります。
具体的には以下の表の通りです。
銀行口座 | 1回目(申請日) | 2回目 | 自己資金として認められる額 |
A銀行 | 1000万円 | 2000万円 | 1000万円 |
B銀行 | 600万円 | 600万円 | 600万円 |
C銀行 | 900万円 | 100万円 | 100万円 |
D銀行 | 提出無し | 500万円 | 0円 |
上記の例だと、2回目のチェック時点では3,200万円の預貯金がありますが、自己資金として認められる額は1,700万円ということになってしまいます。
このようなことにならないためにも、運送業許可の申請をする前から、しっかりと資金計画を立てておくことが大切です。
自己資金は許可申請時から許可処分までの間、所要資金以上確保していることが求められますのでご注意ください。
おわりに
運送業許可を取得するときの自己資金について説明してきましたが、かなりまとまった額の資金が必要だということがおわかりいただけたのでは無いでしょうか。
以前は数百万円の所要資金で許可申請をできましたが、何度かの法令改正が行われて、現在は、最低でも2,500万円以上の資金が必要になると考えていただければと思います。
実際にシグマにご相談いただく中でも、「許可さえ取れれば仕事はあるのに自己資金が用意できない。銀行も許可を取らないと融資をしないと言っている。」というケースがあります。
運送業の許可を取ることを検討するときには、自己資金が用意できるかどうかという点もしっかりと確認することをオススメいたします。
行政書士法人シグマに運送業許可取得の手続きをご依頼いただいた際には、資金計画づくりのお手伝いも含め、計画的な許可取得をしっかりとサポートしています。
運送業許可の取得をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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