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運送業許可の譲渡譲受

運送業(一般貨物自動車運送事業)許可は、日本の許認可制度のなかでは珍しく、営業許可だけを譲り渡し・譲り受けができます。

運送業許可を、ある事業者から別の事業者に移転させる方法としては、この「譲渡譲受(じょうとじょうじゅ)」の他に「合併認可」と「分割認可」がありますが、合併や会社分割は、会社法上の組織再編行為であるため、運送業の許可だけを別の経営主体に移転させる譲渡譲受とは異なります。

譲渡譲受は、これまで個人事業主の法人成りの場合によく行われていましたが、最近は、債務超過状態になっている会社の一般貨物自動車運送事業を別会社に承継させ、その後債務超過の会社を清算する場合に譲渡譲受手続きが行われるケースも増えてきています。

「ライセンスを移動させるだけだから簡単にできるだろう」とお考えの方も多いのですが、実はそう簡単にはいかない手続きなんです。

そこで、このページでは運送業許可の譲渡譲受について詳しく解説します。

※このページの記述は、特に断りのない限り関東運輸局管内での取り扱いを基準に書かれています。

運送業許可の譲渡譲受

運送業許可:譲渡譲受と新規許可の違い

まずは、新たに運送業許可をとって運送業を始めたい事業者にとって、運送業許可を譲り受ける場合と、新規に許可を取得する場合とでどのような違いがあるのかということから見てみましょう。

満たさなければいけない要件

譲渡譲受も新規許可も基本的に要件は同じです。

運行管理責任者や整備管理者を選任し、運送業担当役員が運輸局が実施する役員法令試験を受験していただき、それに合格する必要がありますし、営業所、車庫、車両、資金面といった様々な要件をクリアする必要があります。

新規許可の詳しい要件についてはこちらの記事をご参照ください。

と言っても要件クリアの難易度で考えると、譲渡譲受の方が新規許可の場合よりも低くなりやすい部分もあります。

例えば、新規許可の場合では、営業所と車庫の物件選定が大きなハードルになりやすく(特に東京23区内・川崎・横浜では難しいことが多いです)、中でも車庫は条件の良い物件はなかなか確保することが難しいです。

一方で、譲渡譲受の場合には、営業所、車庫、車両などを譲り受けることができるケースであれば、(許可要件に適合していれば)そのまま使えますので、既存の運送会社が使用している営業所・車庫を引き続き使用できるのであれば、物件選定の悩みは解消できるでしょう。

ただ、実はそれまで使用されていた車庫などが法令違反状態になっていて、そのままでは引き継ぐことができないこともあるため、一概に簡単だと言い切れないところではあります。

審査期間の違い

新規許可申請の場合、申請書が受理されてから運輸局の審査が完了するまで最短でも5か月程度の期間を要します。

一方、譲渡譲受の認可申請の場合、新規許可申請と比較すると、実際の運用上は2ヶ月くらい審査期間が短く、3か月程度が運輸局の標準的な審査期間となります。

ただ、譲渡譲受の場合には、その前提として、運送業許可を譲り渡す事業者との交渉期間がありますので、実質的にはそれほど変わらなかったり、譲渡譲受の方が長期間かかるケースも多いです。

その他の違い

  • 新規許可の場合には登録免許税12万円が必要だが、譲渡譲受では不要
  • 譲渡譲受では、許可番号や事業者番号は引き継ぐ
  • リース車両の場合は、リース会社から承継同意があれば、リース契約は承継可能
  • 譲渡譲受では、行政処分も引き継いでしまう
  • 譲渡譲受では、運輸開始前の報告や運輸開始届出は不要だが、譲渡しおよび譲受けの終了届出を提出
  • 譲渡譲受では、譲渡人の許認可取得状況を正確に把握しないと手続きが進められない

譲渡譲受認可と合併・分割認可申請の違い

運送業を経営している法人を吸収合併する場合や、運送業を経営している法人の運送事業を吸収分割または新設分割する場合、譲渡譲受の場合と同様に認可を取得しなければなりません。

この認可に際しても、基本的に新規許可と同じレベルの要件をクリアする必要がありますので、「新規許可(譲渡譲受)だと要件がクリアできないから、法人の合併・分割の手法で運送業のライセンスを取得しよう」というわけにはいきません。

さらに、合併・会社分割は、会社法上の法律行為のため、法務局への登記申請手続きをはじめとした会社法に則した様々な手続きを踏む必要がありますし、譲渡譲受では負債や契約関係は自動的には引き継ぎませんが、合併・分割では負債・契約関係を引き継ぐことになります。

そのため譲渡譲受よりも手続きがかなり複雑になり、税理士・司法書士・弁護士といった多くの専門家の力を借りなければ手続きを進めることが難しいため、単に運送業のライセンスを取得したいだけであれば、あまりお勧めできる選択肢ではありません。あくまでも合併や会社分割が目的であるときの選択肢です。

譲渡譲受 合併・分割
要件 新規許可と同等 新規許可と同等
審査期間 最短で3ヶ月 最短で3ヶ月
商業登記 不要 必要
引き継ぐもの 運送業許可のみ 許認可、契約、負債も含めた権利義務すべて(合併・分割の方法にもよります)

譲渡譲受が適しているケース

これまで紹介したように、運送業許可を譲り受けるといっても、実際には新規に許可を取る場合と比べてそれほど簡単というわけではありません。

むしろ、譲渡譲受は譲渡側と譲受側があるため、両者間の条件調整で難しい部分が生じてしまい、検討した結果、新規に許可を取ってしまうほうが良いというケースもあります。

では、どのようなケースであれば譲渡譲受に適しているのでしょうか。いくつか譲渡譲受に適していることが多いケースを紹介します。

個人事業の法人成り

個人事業として運送業許可を取得していて、そこから会社を作るような、いわゆる法人成りの場合には、物件や車両なども含めて丸ごとの移転になります。

個人を廃業して会社で新しく許可を取得するよりは、譲渡譲受の方が適していることが多いでしょう。

車両・土地・建物などを安価に譲り受けられる

運送業の開業資金の中でも大きな割合を占めるのが、車両や営業所や車庫に使用する物件の取得費用です。

ここを安く譲り受けられるのであれば、開業時の資金が安く抑えられ、資金要件もクリアしやすくなりますので、譲渡譲受が適しているかもしれません。

事業ごと譲り受けられる

後継者不足で運送事業から撤退を考えられている経営者が増えてきています。

このような場合、荷主なども含めて事業や設備を丸ごと譲り受けられるような場合であれば、譲渡譲受が適しているケースもあります。

昨今の深刻なドライバー不足の状況では、ドライバーさんとの雇用関係も引継げるのならば、新しく許可を取得して採用活動をするよりもドライバーを確保しやすいでしょう。

運行管理者や整備管理者も同様です。

ただし、行政処分や走らない車両、問題ドライバーといった負の資産を引き継いでしまうケースもありますので、引継ぎに際してトラブルが生じないよう十分な注意・調査が必要です。

事業承継

運送業を個人事業主で経営している場合、その個人事業主の方が高齢化などでリタイアする際、従業員の番頭さんやドライバーといった個人の方に引き継ぎたいときは、譲渡譲受の方法で引き継ぐことができます。

また、会社自体は債務超過で事業継続が難しいが、その会社が経営している一般貨物自動車運送事業を承継したいというスポンサー企業がある場合は、一般貨物自動車運送事業をスポンサー企業に売却する際に譲渡譲受手続きが行われることがあります。

譲渡譲受手続きが完了したら、譲り渡し会社が特別清算を行うケースです。

運送業許可:譲渡譲受の注意点

これまで紹介してきたような点も含めて、譲渡譲受の際にはいくつか注意すべき点があります。

対象の特定

まずは、譲渡譲受の対象の特定です。

運送業許可のみなのか、それとも、営業所・休憩睡眠施設・車庫・車両などを含むのかという点に加えて、譲渡人の行政処分の有無や、行政処分を受けている場合はその内容の精査も必要になります。

営業所や車庫の使用権限を譲渡譲受の対象にするときに、譲渡人がそれらの物件を借り受けている場合は、賃借権の引継ぎについての確認を物件所有者と行う必要もあります。

また、車両を引き継ぐときに、残債が残っている車両やリース車両に関しても、販売会社・リース会社との引継ぎ交渉を行う必要があります。

このような営業所・車庫の賃貸関係の引継ぎの場合は、物件所有者が譲受人への賃借権を認めない場合や、賃料の値上げを条件とされることがありますし、車両の場合は、残債の一括返済を販売会社・リース会社から求められることもあります。

特に残債が残っている場合は、最悪、一括返済を行わないと車両を引き継げない場合がありますので、引継ぎ交渉は、譲渡譲受の交渉スタート初期に確認した方がよいでしょう。

事業開始に要する資金

また、譲渡譲受の場合であっても、譲受人の資金計画に沿ったまとまった資金が必要になります。

譲渡譲受の対象となる運送業の事業規模が大きい場合は、資金計画も膨れ上がるため、所要資金も高額になります。

資金は原則、譲受人名義の銀行口座にある預貯金の額です。

自己資金では足りない場合は、金融機関からの借り入れなどの資金調達を行う必要があるでしょう。

金融機関から資金調達をする場合は、譲渡譲受の認可取得前に融資が実行されるかがポイントになります。融資の実行が譲渡譲受の認可取得後の場合は、金融機関からの借入金は、譲渡譲受の資金計画に組み入れることができないからです。

事業開始に要する資金に売掛金を含めることはできますが、月次試算表が必要になります。月次試算表の日付と残高証明書の日付を同日付にする必要があるなど、手続きが煩雑になります。

事業計画

譲渡譲受認可の申請書には、譲渡人の最新の事業計画を記載する必要があります。

正確な事業計画を把握するためには、譲渡人が過去に運輸局に提出した書類を確認する必要がありますので、過去に運輸局に提出した書類が集まらないときは、事業者台帳を情報開示請求手続きをするなどして、情報を集めなければなりません。

事業者台帳の情報開示請求手続きですが、1ヶ月程度の期間を要することもありますので、過去の申請書類の控えが確認できない場合は、情報開示請求手続きにかかる時間も考慮しておきましょう。

運送業許可:譲渡譲受の手続き

運送業の譲渡譲受認可申請をする場合には、ほぼ新規許可のときと同じような流れになります。

譲り受け側の会社などがすでにあることを前提とした場合の流れは以下のとおりです。

(※)がついているものについては不要なこともあります。

  1. 譲渡譲受の条件などの交渉
  2. 営業所、休憩所、車庫(駐車場)に使用する物件探し(※)
  3. 運行管理者、整備管理者(候補)の確保(※)
  4. 資金の準備
  5. 運送業譲渡譲受認可申請に必要な書類の収集と作成
  6. 運輸支局への運送業譲渡譲受許可申請書の提出
  7. 法令試験の受験、合格
  8. 運輸局の審査
  9. 運送業許可の譲渡譲受認可処分
  10. 運行管理者および整備管理者の選任届の提出
  11. 事業用自動車等連絡書の取得
  12. 車両の登録
  13. 運賃料金設定届出書の提出
  14. 運輸開始
  15. 譲渡譲受終了届出書の提出

おわりに

運送業許可の譲渡譲受も新規許可取得も、「運送業許可を取得して運送業を始めたい」というゴールは同じです。

新たに許可を取得するのか、他社の許可を譲ってもらうのかの違いです。

「当初は知人の運送会社の許可を譲りうけることを前提で交渉を進めていたが、条件がまとまらずに新規許可申請を行うことになった」という事案も過去にありました。

許可を取得して事業をはじめて事業を行っていくにあたって、どちらが適しているのかということを総合的に検討して、どの手続きを選択するかを決定しましょう。

とは言ってもなかなか判断に迷われる方も多く、そのような方からのご相談を受けることも多いです。

運送業許可の譲渡譲受申請でお困りの方がおられましたら、ぜひ一度シグマにご相談ください。

シグマでは、運送事業者様をはじめ、金融機関、弁護士、司法書士、税理士といった士業の先生方からも、運送業許可の譲渡譲受についてご相談をいただいております。

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