
運送業(一般貨物自動車運送事業)許可は、日本の許認可制度のなかでは珍しく、営業許可だけを譲り渡すことができます。
運送業許可を、ある事業者から別の事業者に移転させる方法としては、この「譲渡譲受(じょうとじょうじゅ)」の他に「合併認可申請」と「分割認可申請」がありますが、これらは会社自体を再編するものなので、営業許可だけを移転させる譲渡譲受とは異なります。
このページでは運送業許可の譲渡譲受について詳しく解説します。
※このページの記述は、特に断りのない限り関東運輸局管内での取り扱いを基準に書かれています。
Contents
まずは、新たに運送業許可をとって運送業を始めたい事業者にとって、運送業許可を譲り受ける場合と、新規に許可を取得する場合とでどのような違いがあるのかということから見てみましょう。
譲渡譲受も新規許可も基本的に要件は同じです。
役員法令試験にも合格する必要があります。
新規許可の要件についてはこちらの記事をご参照ください。
ただ、譲渡譲受の場合には、営業所、車庫、車両などを譲り受けることができれば、許可要件に適合したものであればそのまま使えますので、その点はクリアしやすいです。
譲渡譲受の方が、新規許可に比べて、実際の運用上は2ヶ月くらい審査期間が短いです。
ただ、譲渡譲受の場合には、その前提として、運送業許可を譲り渡す事業者との交渉期間がありますので、実質的にはそれほど変わらなかったり、譲渡譲受の方が長期間かかるケースも多いです。
運送業を経営している法人を吸収合併する場合や、運送業を経営している法人の運送事業を吸収分割または新設分割する場合、譲渡譲受の場合と同様に認可を取得しなければなりません。
合併・会社分割は、会社法上の法律行為のため、会社法に則した様々な手続きを踏む必要があります。
そのため譲渡譲受よりも手続きが複雑になり、税理士・司法書士・弁護士といった専門家の力を借りなければ手続きを進めることが難しいです。
また、譲渡譲受では負債や契約関係は自動的には引継ぎませんが、合併・分割では負債・契約関係を引継ぐことになります。
さらに、合併・分割では、法務局への登記申請手続きが必要になります。
これまで紹介したように、運送業許可を譲り受けるといっても、実際には新規に許可を取る場合と比べてそれほど簡単というわけではなく、むしろ難しい部分もあるくらいなので、新規に許可を取ってしまうほうが良いというケースも多いです。
では、どのようなケースであれば譲渡譲受に適しているのでしょうか。いくつか譲渡譲受に適していることが多いケースを紹介します。
個人事業として運送業許可を取得していて、そこから会社を作るような、いわゆる法人成りの場合には、物件や車両なども含めて丸ごとの移転になりますので、個人を廃業して会社で新しく許可を取得するよりは、譲渡譲受の方が適していると言えます。
運送業の開業資金の中でも大きな割合を占めるのが、車両や物件の取得費用です。
ここを安く譲り受けられるのであれば、開業時の資金が安く抑えられ、資金要件もクリアしやすくなりますので、譲渡譲受が適しているかもしれません。
荷主なども含めて事業や設備を丸ごと譲り受けられるような場合であれば、譲渡譲受が適しているケースもあります。
昨今の深刻なドライバー不足の状況では、ドライバーさんとの雇用関係も引継げるのならば、新しく許可を取得して採用活動をするよりもドライバーを確保しやすいでしょう。
ただし、行政処分や走らない車両、問題ドライバーといった負の資産を引き継いでしまうケースもありますので、引き継ぎに際してトラブルが生じないよう十分な注意が必要です。
運送業を個人事業主で経営している場合、その個人事業主の方が高齢化などでリタイアする際、従業員の番頭さんやドライバーといった個人の方に引き継ぎたいときは、譲渡譲受の方法で引き継ぐことができます。
これまで紹介してきたような点も含めて、譲渡譲受の際にはいくつか注意すべき点があります。
まずは、譲渡譲受の対象の特定です。
運送業許可のみなのか、それとも、営業所・休憩睡眠施設・車庫・車両などを含むのかという点に加えて、譲渡人の行政処分の有無や、行政処分を受けている場合はその内容の精査も必要になります。
営業所や車庫の使用権限を譲渡譲受の対象にするときに、譲渡人がそれらの物件を借り受けている場合は、賃借権の引継ぎについての確認を物件所有者と行う必要もあります。
また、車両を引継ぐときに、残債が残っている車両やリース車両に関しても、販売会社・リース会社との引継ぎ交渉を行う必要があります。
このような営業所・車庫の賃貸関係の引継ぎの場合は、物件所有者が譲受人への賃借権を認めない場合や、賃料の値上げを条件とされることがありますし、車両の場合は、残債の一括返済を販売会社・リース会社から求められることがあります。
また、譲渡譲受の場合であっても、譲受人の資金計画に沿ったまとまった資金が必要になります。
譲渡譲受の対象となる運送業の事業規模が大きい場合は、資金計画も膨れ上がるため、所要資金も高額になります。
資金は原則、譲受人名義の銀行口座にある預貯金の額です。
自己資金では足りない場合は、金融機関からの借り入れなどの資金調達を行う必要があるでしょう。
譲渡譲受認可の申請書には、譲渡人の最新の事業計画を記載する必要があります。
正確な事業計画を把握するためには、譲渡人が過去に運輸局に提出した書類を確認する必要がありますので、過去に運輸局に提出した書類が集まらないときは、情報開示請求手続きをするなどして、情報を集めなければなりません。
運送業許可の譲渡譲受認可申請をする場合には、ほぼ新規許可のときと同じような流れになります。
譲り受け側の会社などがすでにあることを前提とした場合の流れは以下のとおりです。
(※)がついているものについては不要なこともあります。
運送業許可の譲渡譲受も新規許可取得も、「運送業許可を取得して運送業を始めたい」というゴールは同じです。
許可を取得して事業をはじめて事業を行っていくにあたって、どちらが適しているのかということを総合的に検討して、どの手続きを選択するかを決定しましょう。
とは言ってもなかなか判断に迷われる方も多く、そのような方からのご相談を受けることも多いです。
運送業許可の移転でお困りの方がおられましたら、ぜひ一度シグマにご相談ください。
メールでのお問い合わせは24時間受け付けております。必ず2営業日以内に返信しております。返信が届かない場合には、
といった原因が考えられます。メールが届かない場合には、上記をご確認いただいたうえ、お手数ですが再度メールフォームよりお問い合わせください。