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運送業許可の壁?「自己資金」のリアル – 専門家が計算方法と注意点を徹底解説

緑ナンバーのトラックで運送業を始めるには、一般貨物自動車運送事業の許可が必要です。しかし、誰もが簡単に許可を取得できるわけではありません。前回に引き続き、運送業の許認可手続きに精通した行政書士の阪本浩毅さんをお招きし、今回は許可のもう一つの大きなハードルである「資金」について、詳しくお話を伺いました。

──阪本さん、前回は許可が下りない「欠格事由」について詳しく教えていただきましたが、もう一つ、運送業許可の大きなハードルとして「資金」の問題があると聞きます。具体的には、どのくらいの自己資金が必要なのでしょうか?

阪本:ご質問ありがとうございます。資金計画は許可申請において非常に重要なポイントです。ただ、「いくら必要か」という額は、事業者さんの計画によって大きく異なります。例えば、営業所や車庫をご自身で所有されている場合と、賃貸で借りる場合では、必要な資金額が変わってきます。

──なるほど、一概には言えないのですね。では、どのように計算するのでしょうか? まず基本的なルールについて教えてください。

阪本:運送業の許可を取るためには、まず「事業を開始するために最低限必要な資金」、これを「所要資金」と呼びますが、これをしっかり計算する必要があります。そして、この計算された所要資金以上の金額を「自己資金」として用意できていることを証明しなければなりません。

──所要資金以上の自己資金、ですね。

阪本:はい。そして、ここが最も重要で注意が必要な点なのですが、この自己資金は、運送業の許可を申請した日から、許可が下りる日までの間、常に所要資金の額を上回っていなければなりません。途中で一度でも下回ってしまうと、許可の要件を満たさないことになり、最悪の場合、申請を取り下げなければならなくなります。

──それは大変ですね! 申請期間はどのくらいかかるものなのですか? その間ずっと資金を維持しなければならないのは、かなりプレッシャーですね。

阪本:標準的な処理期間としては、関東運輸局管内ですと概ね5ヶ月程度を見込んでいますが、書類の不備や審査状況によってはそれ以上かかることもあります。おっしゃる通り、その間ずっと資金を維持する必要があるのです。

もし途中で資金が不足して申請を取り下げることになると、単に許可取得までの時間が延びるだけでなく、例えば銀行から融資を受けている場合、事業を始める前に融資の返済だけが始まってしまうといった苦しい状況にもなりかねません。最悪のケースでは、再度同額の資金を用意することが難しくなり、許可取得そのものを断念せざるを得なくなる可能性もあります。

──実務上、どのような点に気をつければ良いでしょうか?

阪本:融資を受けるタイミングや自己資金の管理は非常にシビアに行う必要があると考えます。申請期間中の資金繰りまでしっかりと見越した計画を立てることが不可欠です。安易に「これくらいあれば足りるだろう」と考えるのではなく、余裕を持った資金計画を心がけるべきですね。

──よく分かりました。では、その「所要資金」は、具体的にどのような費用が含まれるのでしょうか?

阪本:所要資金は、大きく分けて7つの項目で計算します。「車両費」「建物費」「土地費」「保険料」「各種税金」「運転資金」、そして最後に「登録免許税」です。これらを一つずつ、ご自身の事業計画に沿って積み上げて計算していきます。

──では、順番に教えていただけますか? まず「車両費」はどのように計算しますか?

阪本:これは、事業に使用するトラックなどの車両にかかる費用です。現金一括で購入する場合は、その車両の取得価格全額が計上されます。分割払い、つまりローンで購入する場合は、契約時の頭金と、その後1年分の分割支払額の合計額を計上します。リース契約を利用する場合は、1年分のリース料を計上するのが一般的です。

──具体例を挙げていただけますか?

阪本:例えば、500万円の中古トラックを頭金100万円、月々の返済額が10万円の5年ローン(金利等は簡略化)で購入する場合、車両費として計上するのは、頭金の100万円と1年分の返済額(10万円×12ヶ月=120万円)を合計した220万円となります。

──次に「建物費」と「土地費」はどうでしょうか? 営業所や車庫、休憩・睡眠施設などが対象ですね。

阪本:はい、考え方は車両費と同様です。これらの事業用施設に関する建物や土地を自己所有とするために購入する場合、一括払いならその取得価格、分割払いなら頭金と1年分の返済額の合計を計上します。賃貸で借りる場合は、契約する際の敷金や保証金(契約書で定められた額)と、1年分の賃料の合計額を計上します。

──こちらも例を教えていただけますか?

阪本:例えば、営業所として月額10万円の事務所を借り、車庫として月額15万円の土地を借りるとします。それぞれ契約時に敷金が3ヶ月分必要だったとすると、建物費・土地費として計上するのは、1年分の賃料((10万円+15万円)×12ヶ月=300万円)と敷金((10万円+15万円)×3ヶ月=75万円)を合計した375万円、ということになります。

──なるほど。「保険料」には何が含まれますか?

阪本:これも主に車両にかける保険料です。まず、法律で加入が義務付けられている自賠責保険料(または自賠責共済掛金)の1年分。次に、任意保険料(または交通共済掛金)の1年分です。ここで注意が必要なのは、任意保険の補償内容です。対人賠償については無制限、対物賠償については最低でも200万円以上の補償能力がある保険に加入することが求められます

さらに、もしタンクローリーなどでガソリンなどの危険物を運送する計画がある場合は、そのリスクに対応するための特別な賠償責任保険(運送保険など)の保険料も1年分計上する必要があります。

──対物200万円以上という指定があるのですね。「各種税金」というのは、具体的に何を指すのでしょうか?

阪本:これも車両に関連する税金が中心となります。まず、毎年納付する自動車税(種別割)と自動車重量税のそれぞれ1年分。そして、車両を購入した際にかかる環境性能割(以前の自動車取得税に相当)を計上します。

──そして「運転資金」ですが、これはかなり多岐にわたりそうですね。どういった項目を見込むのでしょうか?

阪本:はい、ここは事業を実際に動かしていくための当面の経費、いわばランニングコストを見込んで計上します。

主なものとして、まず人件費、次に燃料油脂費(ガソリン代や軽油代など)、そして車両の修繕費、これらをそれぞれ6ヶ月分計上します。それから、事務所の机や椅子、パソコン、電話機といった什器備品の購入費用(これは取得価格)。さらに、その他の経費として2ヶ月分を計上します。

──人件費や燃料費などが6ヶ月分というのは、かなり大きな金額になりそうですね。「人件費」には、役員報酬や従業員の給料以外も含まれるのですか?

阪本:はい、単なる基本給だけではありません。役員がいれば役員報酬、従業員がいれば給与の他に、残業代や通勤手当などの各種手当、賞与(見込み額の一部を按分して計上)、そして忘れてはならないのが、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの会社負担分である法定福利費です。さらに、福利厚生のための費用(厚生福利費と呼ばれ、一般的には給与総額の2%程度で計算)なども含めて算出します。

計画しているドライバーさん、運行管理者、事務員さんなど、雇用予定の従業員全員分について、6ヶ月分を見込む必要があります。

──具体的に計算すると、かなりの額になりそうですね。例えば、どのような計算になりますか?

阪本:仮に、ドライバー5名(月額人件費・諸経費込みで40万円)、運行管理者兼整備管理者1名(同30万円)、役員1名(同50万円)という体制でスタートするとします。すると、1ヶ月の人件費合計は(40万円×5名)+ 30万円 + 50万円 = 280万円。これの6ヶ月分ですから、1,680万円を人件費として計上することになります。

──なるほど…! 「その他の経費」というのは、具体的にどのようなものですか?こちらは2ヶ月分なのですね。

阪本:はい、その他経費は2ヶ月分です。具体的には、事務所の家賃(もし建物費で1年分計上済みであれば除く)、水道光熱費、電話代やインターネット料金などの通信費、出張などがあれば旅費交通費、コピー用紙などの消耗品費、名刺作成などの印刷費、業界団体への会費、場合によっては広告宣伝費などが含まれます。これらを合算して2ヶ月分を見込みます。

──最後に「登録免許税」とは何でしょうか?

阪本:これは、運送業の許可が無事に下りた際に、許可証を受け取るために国に納付する税金です。金額は一律で12万円と決まっていますので、この額を計上します。

──これら7つの項目全てを正確に合計したものが「所要資金」になるわけですね。かなり複雑で、自分で計算するのは少し大変そうです…。

阪本:おっしゃる通り、各項目を漏れなく、かつ正確に算出するのは専門的な知識も必要になります。我々行政書士のような専門家でも、申請者の方の事業計画を丁寧にお聞きしながら慎重に計算する部分です。そして、この合計額以上の「自己資金」があることを証明する必要があるわけですが、その証明方法にも厳格なルールがあります。

──自己資金があることの証明は、具体的にどのように行うのでしょうか? 銀行の通帳のコピーとかではダメなのですか?

阪本:基本的には、申請する会社名義の預貯金で証明します。個人事業主の場合は事業用の口座、法人の場合は法人名義の口座の残高が対象です。社長個人の預金口座の残高は、原則として自己資金とは認められません。証明書類としては、銀行が発行する正式な「残高証明書」が必要です。

──残高証明書ですね。それは、いつの時点のものが必要になるのですか?

阪本:原則として、2つの時点での残高証明書が必要になります。1回目は、運輸支局に許可申請書を提出する「申請日直近」時点のもの。2回目は、申請後しばらく経ってから、運輸局から「この日の残高証明書を追加で提出してください」と指定される特定の日付時点のものです。

もし会社が複数の銀行口座を持っている場合は、原則として全ての口座について、それぞれの時点での残高証明書が必要になります。また、残高証明書には必ず口座番号が記載されているものを準備してください。

──2回もチェックがあるのですね。その申請日から2回目の証明日までの間、口座のお金は一切動かせないのでしょうか?

阪本:いえ、口座の預金の出し入れ自体が禁止されるわけではありません。通常の事業活動に必要な支払いなどは当然行えます。ただし、先ほど強調したように、2回目の残高証明書の提出時点で、証明が必要な全ての口座の合計残高が、最初に計算した「所要資金」の額を下回ってしまっていては絶対にいけません。

ですから、申請期間中の資金管理には細心の注意が必要です。大きな支払いがある場合は、タイミングを慎重に検討する必要があります。

──もし、どうしても預貯金だけでは計算した所要資金に少し足りない、という場合は、何か他の方法はあるのでしょうか?

阪本:預貯金で証明するのが大原則ですが、本当にあと少し足りない、といった場合に限り、会社の資産である売掛金を自己資金として加算して認められるケースも、理論上はあります。ただし、これはあくまで例外的な扱いです。認められるかどうかは運輸局の判断によりますし、運輸局ごと(例えば関東と東北など)でその運用基準が異なることもあります。

売掛金を自己資金に含めて申請したい場合は、必ず申請前に運輸局の担当窓口に相談し、その見込みについて確認しておく必要があります。証明方法も、預貯金と同じタイミングでの「見込み貸借対照表」といった会計書類が必要となり、手続きも複雑になります。

──実務上のアドバイスとしては、どう考えれば良いでしょうか?

阪本:安易に回収前の売掛金などを自己資金に含めて計画を立てるのは、リスクが高いと言わざるを得ません。まずは必要となる所要資金を正確に計算し、それを上回る預貯金を確実に用意することを目指すのが、許可取得への最も確実な道です。

──自己資金として最終的に認められる金額について、もう少し詳しく教えていただけますか? 2回チェックがあるとのことですが、例えば、申請日(1回目)の残高より、指定日(2回目)の残高の方が増えていたら、増えた後の額で認めてもらえるのでしょうか?

阪本:いいえ、そこが非常に重要なポイントであり、誤解しやすい点でもあります。2回目の残高チェックは、あくまで「申請時に確保されていた自己資金が、許可審査の期間中もきちんと維持されているか」を確認するためのものです。

ですから、たとえ2回目のチェック時点の残高が1回目の申請日時点より増えていたとしても、自己資金として認められるのは、原則として1回目の残高証明書で確認された金額が上限となります。

──では、逆に減ってしまっていた場合はどうなりますか?

阪本:その場合は、残念ながら減ってしまった後の金額、つまり2回目のチェック時点での残高で判断されることになります。具体例で見てみましょう。例えば、A銀行、B銀行、C銀行の3つの口座を持っているとします。

  • A銀行:1回目(申請日)1000万円 → 2回目 800万円 ⇒ 自己資金としては800万円
  • B銀行:1回目(申請日)500万円 → 2回目 500万円 ⇒ 自己資金としては500万円
  • C銀行:1回目(申請日)300万円 → 2回目 600万円 ⇒ 自己資金としては(増えていますが)1回目の300万円

このケースでは、各口座の1回目と2回目の残高を比較し、少ない方の金額(A銀行800万、B銀行500万、C銀行300万)を合計した1600万円が、この会社が確保している自己資金として最終的に認められる額になります。

──もし、この会社の所要資金が計算上1700万円必要だったとしたら、このケースでは自己資金不足と判断されてしまうわけですね…。申請期間中にうっかり大きな支払いをして、口座残高が減ってしまうと、命取りになりかねないということですね。

阪本:まさにおっしゃる通りです。だからこそ、運送業の許可申請をすると決めたら、その申請日から許可が下りるその日まで、常に所要資金以上の残高をキープできるよう、しっかりとした資金計画を立て、日々の資金管理を徹底することが、何よりも重要になってくるのです。

──今日お話を伺って、運送業許可に必要な自己資金の準備が、いかに計画的かつ慎重に行うべきか、その重要性がよく分かりました。やはり、かなりまとまった額が必要になるのですね。

阪本:そうですね。以前は規制緩和の流れの中で、比較的少ない資金でも許可が取得できた時期もありましたが、安全確保や労働環境改善、コンプライアンス遵守といった社会的要請の高まりを受け、ここ十数年で何度か法改正や運用基準の見直しが行われました。その結果、現在、運送業許可を取得するために求められる資金的な要件は、以前に比べてかなり厳しくなっています。

具体的な事業計画の内容(使用する車両の台数、営業所や車庫を賃借するか自己所有かなど)によって大きく変動しますが、最低でも2,000万円から2,500万円程度の所要資金になるケースが多いというのが、我々の実感です。もちろん、大規模な事業計画であれば、数千万円、あるいはそれ以上の資金が必要になることもあります。

──実際に阪本さんが相談を受ける中で、やはり資金面で苦労されている方は多いのでしょうか?

阪本:はい、残念ながら非常に多くいらっしゃいます。「長年ドライバーとして経験を積んできたので、独立して自分の会社をやりたい。仕事のあてもあるし、トラックも用意できる。でも、自己資金だけがどうしても足りない…」「銀行に融資の相談に行ったら、『運送業の許可が取れるなら融資します。まずは許可を取ってから来てください』と言われてしまった」といったお悩みは、本当によく耳にします。

許可を取得するためにはまとまった資金が必要なのに、その資金を調達するためには許可が必要という、一種の「鶏が先か、卵が先か」のようなジレンマに陥ってしまう方も少なくありません。

──それは本当に厳しい状況ですね…。何か解決策はあるのでしょうか?

阪本:資金調達には、自己資金の準備に加えて、日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の制度融資、民間の金融機関からの借入れなど、様々な方法が考えられます。しかし、いずれの場合も、しっかりとした事業計画と、それを裏付ける自己資金の準備状況が審査では重要になります。

ですから、運送業の許可取得を検討される際には、前回お話しした欠格事由に該当しないかの確認と並行して、この自己資金の要件をクリアできるかどうか、現実的な資金調達計画を立てられるかどうかが、プロジェクトを進める上での非常に重要な検討ポイントになります。

融資を利用する場合も、許可申請のどのタイミングで、どの程度の自己資金が必要になるのかを正確に把握した上で、金融機関の担当者と粘り強く相談していくことが大切です。

──資金計画の立案も含めて、やはり専門家への早めの相談が有効そうですね。

阪本:はい、その通りだと思います。我々のような運送業許可専門の行政書士にご相談いただければ、個別の事業計画に応じた所要資金の正確な計算はもちろんのこと、自己資金として認められるものの範囲や証明方法、申請期間中の資金管理に関する注意点などについて、具体的なアドバイスをさせていただくことが可能です。

また、必要に応じて、融資に詳しい行政書士をご紹介するといった連携も可能です。許可申請の計画段階からご相談いただくことで、資金面での不安を解消し、スムーズな許可取得、そしてその後の安定した事業運営に向けたサポートを全力でさせていただきます。

──大変よく分かりました。今回も貴重なお話をありがとうございました。資金計画の重要性を改めて認識しました。

阪本:どういたしまして。お役に立てれば幸いです。

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