増車手続きをご検討中の運送業者様へ 車庫面積に不足はないですか?
運送業(一般貨物自動車運送事業)で使用する車両を増やす手続き、いわゆる増車手続きを進める場合、車両の手配から進められる運送会社様が多いのではないでしょうか。
「何トン車にしようか?」
「メーカーはどこにしようかな?」
「架装どうする?」
「新車にしようか。それとも中古車にしようか。新古車ないかな」
「現金で購入しようか。それともリース組もうかな。」
増車をする際、運送業の許認可手続き上、車両を先に検討していただく必要がありますので、中古車で増車するケースでは、実際に販売店に現車を見に行くなど、車両の検討を先に進めることも多いです。
このように増車手続きを車両の検討から進めるのは決して間違いではないのですが、車両を確保したとしても、その車両に事業用ナンバーをすぐに取り付けられない場合があることがあることをご存知でしょうか。
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運送業の法令遵守体制に問題はありませんか?
まずひとつめのパターンはそれほど多くはないのですが、法令遵守体制に問題がある運送会社様が増車手続きを行う場合、届出手続きではなく、認可申請となる場合があります。
届出手続きではなく認可申請となった場合には、運輸局側での審査が行われるため、即日に連絡書が発行されないのが手続き上の大きな違いとなります。
また、審査の結果、法令遵守体制に問題があると運輸局と判断した場合には、増車を認めないという判断(不認可)になってしまいます。
増車手続きを認可ではなく届出手続きとして進める場合の法令遵守体制については、次の4項目のいずれにも該当していないことが求められています。
- 貨物自動車運送事業法第5条第3号に準ずる密接な関係を有する者が一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者である。
- 変更に係る営業所における行政処分の累積違反点数が12点以上である。
- 変更に係る営業所について、申請日前1年間に、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行う巡回指導による総合評価において「E」の評価を受けている。
- 変更に係る事業用自動車の数と申請日前3ヶ月以内において増車した事業用自動車の数との合計が、申請日から起算して3ヶ月前時点における同一営業所に配置する事業用自動車の数の30%以上となる(当該合計が10両以下であるときを除く)。
この1.~4.のいずれかひとつでも該当してしまうと、増車手続きは、届出手続きではなく、認可申請となってしまうのです。
ひとつめの「貨物自動車運送事業法第5条第3号に準ずる密接な関係を有する者」というのが少しわかりにくいかもしれませんので補足で少しだけ説明します。
これは形式上役員から外れたり別の会社を作って不利益を免れようとすることを防止するために、「直接会社の役員ではなくても、大株主や親会社などの形で会社を実質的に支配しているような者が5年以内に許可の取り消しをしていると届出手続きでは増車できませんよ」、という規定です。
また、3に該当する、巡回指導で「E」評価を受けている運送会社様が増車手続きをしようとした場合は、巡回指導で指導員から指摘を受けた項目全てに対して改善報告手続きを完了していないと、増車手続きを進めることすらできません。
運送業の認可車庫面積に不足はありませんか?
私どもが関与している増車手続きにおいて増車手続きが中断してしまう原因のナンバー1は、収容能力(車庫面積)の不足です。
車庫面積が不足していると、どんなに増車する車両の納車準備が整っていても、事業用ナンバーを取得する際に必要な連絡書を取得することができないため、事業用ナンバーの交付を受けることができないのです。
希望ナンバーの申込手続きが完了しても、結論は同じです。
増車手続きの際に注意が必要な車庫面積とは、物理的に車両が駐車できる面積を確保していることもそうですが、認可車庫面積が基準となります。
認可車庫面積とは?
認可車庫面積とは、運輸局が管理している事業者台帳に記載されている車庫面積のことを言います。
認可車庫は、新規許可取得時から車庫の変更がない場合は、新規許可申請書に添付した車庫の求積図面に記載されている面積が認可車庫面積となります。
新規許可取得後に、車庫の移転や車庫の拡張をしている場合は、事業計画変更認可申請書に添付した車庫の求積図面に記載されている面積が認可車庫面積となります。
認可車庫面積の確認方法は、運輸局にこれまで提出された申請書類を確認するのが一般的です。
過去の申請書類が保存されていない場合は、営業所を管轄する運輸支局の窓口に出向くことで確認できることがありますし、運輸支局の窓口でも確認できない場合は、事業者台帳を情報開示請求手続きを経て取り寄せるなどの方法で確認することもできます。
自社が使用可能な車庫を確保していても、運輸局へ申請していない車庫(無認可車庫)は認可車庫面積としてはカウントされませんのでご注意ください。
配置車両の所要面積
通常、増車を予定している車両には5台以上の事業用自動車(トラック)が配置されているかと思います。
この配置されている車両がどのくらいの面積を占有しているのか、さらに増車する車両が占有する面積が何平方メートルなのかを増車手続きの際に検討します。これが配置車両の所要面積となります。
配置車両の所要面積を検討する際、車両1台毎の目安となる占有面積の参考値(目安)が運輸局より示されております。
最大積載量 | 占有面積の参考値(目安) |
7.5t以上 | 38㎡ |
2tロング超~7.5t未満 | 28㎡ |
2tロング | 20㎡ |
2t以下 | 15㎡ |
海上コンテナ輸送をされている運送会社様が使われているヘッドとドレーの占有面積の参考値(目安)は、こちらです。
占有面積の参考値(目安) | |
ヘッド(牽引車) | 27㎡ |
ドレー(被牽引車) | 36㎡ |
1台毎の専有面積を車両の大きさに加えて前後左右50cmの間隔を加えて算定しても構いませんが、この計算方法では手間がかかってしまいます。
認可車庫面積に対して配置車両の所要面積に余裕がある場合は、各車両の占有面積の参考値を使って配置車両の所要面積を検討するのが一般的です。
認可車庫面積の余裕がない場合
認可車庫面積と配置車両の所要面積を検討して、車庫の面積に余裕がない場合は、車庫の平面図上で、車両が全台数収容できないかの検討をしましょう。
車庫面積に余裕がない場合というのは、東京運輸支局管内にある営業所の場合は、
配置車両の所要面積 ÷ 認可車庫面積 ×100(%)で計算した割合が100%を超える場合です。
以前はこの数式で90%超える場合が「余裕がない場合」とされていたようですが、2021年7月時点では、100%を超える場合が「余裕がない場合」として取り扱われております。
全台数収容できないかの検討を進める際には、車両の長さ・幅が重要になりますので、正確な数値を確認するため、車検証のコピーを手元に用意してください。
ここでいう全台数収容できるというには、配置車両が、車両の前後左右50cmの間隔を確保した状態で車庫の中に収容できることを指します。
50cmの間隔が確保できず、例えば車両と車両の間隔が拳1個分しかない状態で物理的に駐車できるとしても、許認可上は「収容できている」とは言えませんのでご注意ください。
認可車庫面積を増やす手続き
車庫平面図上でシュミレーションしたものの、どうしても前後左右50cmの間隔を確保して車両を収容できない場合は、認可車庫面積を増やすことが一般的な方法です。
しかし認可車庫の面積を増やすことは事業計画の変更認可申請に該当するため、運輸局に認可申請書を提出して受理された場合でも、即日で認可車庫面積が増えるわけではありません。
東京・神奈川に営業所のある運送会社様の車庫面積を拡張する認可申請の審査期間は、2~3ヶ月程度は必要になると考えてください。
認可車庫面積が不足している場合の増車手続きは、
- 拡張する車庫の準備
- 認可車庫面積を増やす事業計画変更認可申請(東京・神奈川の場合では審査期間は2~3ヶ月)
- 増車手続き(連絡書取得)
- 事業用ナンバーの取得
という流れになります。
現在、認可を受けている車庫とは別の土地を認可駐車場として使用したい場合は、そもそもその土地が運送業の車庫としての条件を満たしているかの調査からはじめます。
調査の結果、車庫として使用可能であるという判断した場合は、貸地の場合であれば賃貸借契約書を用意したり、接道の道路幅員証明書などの書類を用意したりといったステップに進みます。
最後に
車両を増車される運送会社様の多くは、荷主さんの要望を受けての増車になると思いますので、運行開始日が決まっている場合が多いのではないでしょうか。
認可車庫面積に余裕があるのであれば、車両の納車準備が整っていればすぐに増車手続きができます。
一方で、認可車庫面積に余裕がない場合は、認可車庫面積を増やしてからの増車手続きとなりますので、増車スケジュールが大幅に長くなってしまいます。
増車手続きを進められる際には、増車する車両の検討も大切なことですが、増車を行う営業所の認可車庫面積が、増車後の車両を全て収容する能力が確保されているのかの確認も必ず実施してからはじめることをオススメします。
確実に増車のスケジュールを組みたいとお考えの運送会社様は、運送業専門の行政書士に手続きを依頼することをご検討されてはいかがでしょうか。
行政書士法人シグマは、運輸業専門の行政書士事務所として、これまで多くの手続きのお手伝いをしてきた実績がございますので、運送業の増車手続きでお困りでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
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