運行管理者基礎講習を受講しました。
弊所の行政書士が、ヤマト・スタッフ・サプライ株式会社様が開催されている運行管理者基礎講習(貨物)を受講して参りました。
普段は運送会社様の許認可申請手続きを担当している行政書士が、3日間の基礎講習を受講した結果、様々な気づきがあったようです。
以前別のスタッフが受講した際には、講習の雰囲気などを中心にお伝えしましたので、今回は講習の具体的な内容をメインにご紹介したいと思います。
これから基礎講習を受講予定の方に雰囲気を感じていただけると幸いです。
Contents
基礎講習の教材
基礎講習に使用するテキスト
- 運行管理者基礎講習用テキスト NASVA
- 運行管理者基礎講習用テキスト 法令集 貨物編 NASVA
- 運行管理者基礎講習(貨物)サブノート ヤマト・スタッフ・サプライ㈱
NASVAのテキストはとても厚く内容が多いので、講習はヤマトさん作成のサブノートを中心に進んでいきました。
サブノートには内容がコンパクトにまとめてあって、法令集をあちこち探さなくても同じページの横に記載されていたりなど分かりやすかったです。
重要な内容の部分はテキストや法令集を確認しながら進めていきました。法令集の参照ページも記載されているのですぐ見つけられるようになっています。
サブノートは語句を穴埋めするようになっていて説明を聞きながら記入していきます。サブノートと同じ内容が前のスライドに写されているので確認しながら記入できました。
このサブノートは非常に使い勝手がよかったです。
運行管理者基礎講習1日目
1日目は貨物自動車運送事業に関係する法律についての説明、貨物自動車運送事業法の運行管理者の業務、自動車事故報告規則についてでした。
関係する法律は
- 貨物自動車運送事業法
- 道路運送車両法
- 道路交通法
- 労働基準法
です。そしてそれぞれの法律には政令、府令、省令が定められています。
貨物自動車運送事業法とは貨物自動車運送事業の運営及び安全に関することについて定めたものです。その目的は
第1条
この法律は、貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとするとともに、貨物自動車運送に関するこの法律及びこの法律に基づく措置の遵守等を図るための民間団体等による自主的な活動を促進することにより、輸送の安全を確保するとともに、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
一番重要なのは輸送の安全の確保であり、研修を通して安全の確保が大切ということは何度も説明されました。運行の安全を確保するために運行管理者がいて、その業務も全て安全のためにあるということです。
運行管理者選任数は管理自動車の数によって変わります。
運行管理者の選任人数(最低限)=1名+管理自動車数÷30
です。
自動車が29両までの場合は1名以上、30両から59両までの場合は2名以上、60両ですと3名以上選任することが必要です。
運行管理者の業務は、貨物自動車運送事業輸送安全規則の第20条一項に17号、第二・三・四項ととてもたくさんありますが、運行管理者の業務は、事業者が行うべき安全確保の業務のうち、一般の社員でもできる行動をすること、です。
法律上、事業者にしかできない安全確保の業務とは
- 選任をすること → 人事・任命権
- 定めをすること → 決定権
- 支払いをすること → 決裁権
です。
運行管理者の業務は上記の事業者の業務以外で従業員に対する指導及び監督を行うことであり、運転者に対する点呼を行い、報告を求め、確認を行い、指示を与え、記録し、保存するなどがあります。運行指示書の作成もあります。
1日目を終え、全てが安全のための仕事だと理解できました。
運行管理者基礎講習2日目
2日目は道路運送車両法、道路交通法、労働基準法についてでした。
これらの法律は自動車運送事業に関わる方々のみでなく、自動車を運転する方であれば関係がある法律です。
道路運送車両法
道路運送車両法は自動車の登録(ナンバープレート)についてと自動車の整備事業について定められています。ナンバープレートについて位置や角度など定められているとのことでした。
身近なことですがよく分かっていなかったので勉強になりました。
点検整備の実施も重要です。日常点検でブレーキ、タイヤ、ライト、ウインカーの点検は1日1回運行開始前に行わなければなりません。その他(バッテリー、エンジン、ウインドウォッシャーなど)の点検は適切な時期で足ります。
そして整備管理者の選任です。自動車運送事業に供する自動車5両以上で1名選任することが必要です。
整備管理者は
- 日常点検について実施方法を定め、実施すること、又は運転者に実施させること
- 運行の可否の決定
- 定期点検について実施方法を定め、実施すること、又は整備工場等に実施させること
などの権限があります。
そして点検整備の実施計画を定め、点検整備記録簿の管理・自動車車庫の管理、運転者及び整備要員を指導・監督しなければなりません。
整備管理者の業務も安全が重要というところから必要な業務だと理解できました。
道路交通法
道路交通法も普段関係のあることについての法律だなと思いました。
駐車とは、停車とは、車両の交通方法、横断歩道などについてです。
横断歩道横断歩行者等の保護のためにあるもので、直前では徐行しなければならないし、歩行者等が横断しているとき、または横断しようとしているときには一時停止しなければなりません。
自分が歩行者で横断歩道で止まっていても全く止まってくれない自動車もたまにいますが、これは法律違反ということになりますね。
労働基準法のところでは自動車運転者の拘束時間、休息期間、運転時間の限度、連続運転の中断方法について学びました。
原則1ヶ月の拘束時間は293時間までです。
労使協定がある場合は月間で293時間を超える回数を1年のうち6回までとすることができます。
超えたとしても1ヶ月の拘束時間は320時間以内に収めなければならず、1年の拘束時間の合計は3516時間以内にしなければなりません。
休息期間は継続8時間以上与えなければなりません。休息期間とは勤務終了後職場を離れ業務を全くしない時間のことです。
1日の拘束時間は基本は13時間を超えないものとし、超えたとしても始業時間から起算して、24時間の中で最大16時間までとします。
1日についての拘束時間が15時間を超える回数は1週間につき2回までです。
運転時間の限度は特定の日と前日の平均運転時間、特定の日と翌日の平均運転時間が両方とも9時間を超えたら違反となります。
連続運転時間は4時間までです。
4時間運転したら30分以上の運転中断時間をとらなければ次の運転はできません。運転中断時間を分割してとる場合は1回10分以上で合計30分以上運転中断時間を連続運転時間が4時間を超える前にとらなければなりません。
これらの時間については図を見ながら一つ一つ確認していかないと理解できず、分かりにくかったです。
慣れてくれば違反か違反でないかがぱっと分かるようになるのではないかと思います。
運行管理者基礎講習3日目
3日目は最初に試問でした。
講義の最中に「ここはテストに出るかもしれませんよ。」などど言われていたのでその部分は多少は前日に復習していました。
ただ、テキスト持ち込めるだろうと思っていたのであまりしっかりとは勉強していませんでしたので、当日テストの前に「テストなのでテキストはしまってください。」と言われ焦りました。
時間は35分で25問です。○✕問題が30問ほどで4択が5問ほどでした。
○✕問題は一問の文章が割と長くて一見読んでみると正解な気がして、明らかに間違いと分かる問題以外はとても難しかったです。
4択問題は運転者の拘束時間や運転時間などについて正しいものを選べ、というものでした。きっちりした数字はうろ覚えでしたが、なんとなくこれがおかしいな、という感じで分かりました。
試問時間終了後、すぐに解答解説でした。
講師が一問ずつ解説していき、自己採点し合計点数を書き込みます。問題用紙と解答用紙が一体となっていて、終了後に回収されます。
1問4点で60点以上が合格とのことです。合格点に満たなかったら補講を受けなければならないそうですが、試問後の解説が補講になるとのことで、合格でも不合格でも終了時間は同じということでした。
わたしは合格点には届いたのですが、もっと勉強しておけばよかったなと思いました。
とりあえず試問が終了してここでほっとしました。
速度と距離
その後は速度と距離の関係のお話があり、そこで印象に残った話は追い越しに必要な距離についてです。
高速道路を走行中のトラックが乗り合いバスを追い越す場合必要な距離はどれくらいかというもので、答えは1440mでした。追い越すのにそんなに距離が必要なのかと驚きました。
高速道路では特に短い時間で長い距離を走行します。急ブレーキをかけて停止するのにだいぶ距離が必要です。
停止距離は空走距離と制動距離の合計です。
空走距離は危険を察知してからブレーキをかけはじめるまでの距離とのことです。
空走時間は1秒かかるそうです。
時速80km/hで走行中だと空走時間の1秒で進む空走距離は22.2mです。それに止まるまでにかかる制動距離を合わせるとかなりの距離になります。
ぶつかりそうだと気づいてから急ブレーキをかけてもとても間に合わないのです。
事業用自動車総合安全プラン2009
改正法や罰則、取締の強化などで交通事故自体は減少しているとのことですが、事業用自動車は減少の歩みが遅いようです。
そこで2009年に国が本腰を上げて、事業用自動車の事故を減らすための長期計画を打ち出しました。
それが”事業用自動車総合安全プラン2009″です。
この計画により、10年間を事故削減のための集中期間とし、PDCAサイクルに沿って取組を進めるよう関係機関に通知されましたが、目標達成は厳しい現状のようです。
- 10年間で死者数半減
- 10年間で人身事故件数半減
- 飲酒運転ゼロ
- 危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無
運輸安全マネジメント制度
平成17年に鉄道・自動車・海運・空港で「人為的ミス」(ヒューマンエラー)が原因の重大事故が多発しました。
それをきっかけに運輸安全マネジメント制度が導入されました。
ヒューマンエラーとは2種類あり、
- うっかりミス、錯覚により行ってしまう動作
- 危ないとわかっていながら行ってしまう動作
分かっていながら従業員に危険行為をさせてしまうのは職場環境や企業風土も原因です。
ミスをすると厳しい研修、罰金等のペナルティ、売上・効率重視の雰囲気などがあると、分かっていながら危険行為を行ってしまうことがあります。
運輸事業者にとって企業経営の最重要事項である安全を確保するためには経営のトップから現場まで、隅々に安全最優先の意識を浸透させなければなりません。
そのために事業者内部に安全風土、文化を定着させ、徹底させる仕組みをつくることが必要です。
点呼についてと健康管理についてのDVD視聴がありました。点呼を実際にどのように行うのか、健康管理が重要だということが映像で見られてとても分かりやすかったです。
健康管理の基礎知識
最後は健康管理の基礎知識についてでした。
健康起因事故が起こらないように健康管理は重要です。健康起因事故とは「運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなかったもの」であり体調不良で運転を中止した場合もこれに含まれるとのことです。
定期健康診断の実施、薬を正しい方法で飲む、点呼時の健康チェック、などは必要不可欠です。
運転者は脳疾患・心臓疾患を起こしやすいそうです。考えられる理由は食事が不規則で運転席に座りっぱなしのため肥満者が多いということと喫煙者が多いということです。
緊急時の応急処置についてはまず、負傷者の救護・安全確保。意識がなければ救急車の手配。呼吸がない場合は直ちに心肺蘇生を開始します。胸骨圧迫(心臓マッサージ)です。
とにかくためらって何もしないくらいなら胸骨圧迫を行って下さいとのことです。
まとめ
今回、運行管理者の基礎講習を受講させていただき、すべての講義を通して安全が最重要事項であるということが実感できました。
全ては安全のために法律があり、様々な定めがあるということだと思いました。
運行管理者についても知識がなかったのですがどのようなものなのか学ぶことができました。
今後の仕事においても今までとは違った角度で取り組めるのではないかと思います。
安全についても普段から心がけて、いざというときに今回学んだ知識を活かしていきたいと思いました。
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