運送業(一般貨物自動車運送事業)許可サポート 東京都・神奈川県を中心に一都六県のお客様に対応いたします。

トラック増車、「すぐ緑ナンバー」とは限らない? 認可車庫面積と法令遵守の落とし穴を専門家が指摘

今回も、運送業の許認可申請を専門とする行政書士の阪本浩毅さんにお話を伺います。

事業が拡大し、トラックを増やしたい(増車)と考える運送会社様は多いかと思います。新しいトラックを選定するのは楽しみなプロセスですが、実は車両を手配しただけでは、すぐに緑ナンバーを取得して運行を開始できるとは限らない、とのこと。

今回は、運送業の増車手続きにおける注意点、特に「認可車庫面積」と「法令遵守状況」という二つの大きな落とし穴について、詳しく解説していただきます。

増車は車両選びから? 知られざる「待った!」がかかる理由

── 阪本さん、本日もよろしくお願いいたします。運送会社がトラックを増やす「増車」ですが、まずは「どんなトラックにしようか?」と車両の検討から入ることが多いのではないでしょうか?

阪本: よろしくお願いします。おっしゃる通り、増車を計画される際、どのメーカーの何トン車にするか、新車か中古か、架装はどうするか、リースか購入か…など、車両の検討から始められるのが一般的ですし、それは必要なプロセスです。特に中古車の場合は、現車を確認しに行くなど、車両の手配を先行させることも多いですね。

── でも、それが間違いではないけれど、注意が必要だと?

阪本: そうなんです。車両が決まって、いざ納車!となっても、その車両にすぐに事業用の緑ナンバーを付けて運行を開始できるとは限らない、ということをご存知ない方が意外と多いのです。増車手続きには、車両の準備以外にもクリアすべきハードルがあります。

チェックポイント1:法令遵守状況は大丈夫?「届出」か「認可申請」か

── 一つ目のハードルは何でしょうか?

阪本: まず、会社の「法令遵守体制」が問われます。

通常、増車の手続きは運輸支局への「届出」という比較的簡易な手続きで済み、書類に不備がなければ即日で緑ナンバー取得に必要な「連絡書」が交付されます。しかし、法令遵守状況に問題があると判断される場合は、これが「認可申請」という、より厳格な手続きになります

── 「認可申請」になると、どう違うのですか?

阪本: 認可申請になると、運輸局内部での審査が行われるため、連絡書の即日交付はまずありません。審査には日数がかかりますし、審査の結果、法令遵守体制に重大な問題があると判断されれば、増車自体が認められない「不認可処分」となります。

── どのような場合に「認可申請」になってしまうのでしょうか?

阪本: 主に4つのケースが定められています。

少し複雑ですが、かいつまんで言うと、

  • 会社と密接な関係にある者(親会社や実質的支配者など)が過去5年以内に許可取消しを受けている場合
  • 増車を行う営業所の行政処分の累積違反点数が12点以上の場合
  • 過去1年以内に適正化事業実施機関の巡回指導で最低評価の「E評価」を受けている場合
  • 短期間(3ヶ月)で大幅な増車(既存車両数の30%以上、ただし合計10両以下を除く)を行う

場合、のいずれかに該当すると認可申請となります。これは、問題のある事業者が安易に規模を拡大できないようにするためのチェック機能と言えます。

── 特に「E評価」を受けている場合は、注意が必要だと聞きました。

阪本: その通りです。巡回指導で「E評価」を受けた場合は、指摘された全ての事項について改善報告を行い、それが受理されていなければ、そもそも増車の認可申請(あるいは届出)手続き自体を進めることができません。まず改善が先、ということです。

チェックポイント2:最重要!「認可車庫面積」は足りていますか?

── 法令遵守状況がクリアできても、まだハードルがあると?

阪本: はい、こちらの方が、増車手続きがストップする原因としては圧倒的に多いのですが、それは「認可されている車庫の面積(認可車庫面積)」の不足です。

── 車庫の面積不足、ですか。物理的に停めるスペースがあれば良いというわけではないのですね?

阪本: まさにその通りです。ここが最大の誤解ポイントかもしれません。

運送業の許可では、単に物理的な駐車スペースがあるだけでなく、運輸局に「この面積を車庫として使います」と申請し、認可された面積(=認可車庫面積)が、配置する全車両を収容できる広さである必要があります。

どんなに良いトラックを準備しても、この認可車庫面積が足りなければ、緑ナンバー取得に必要な連絡書は絶対に交付されません。希望ナンバーを予約していても、同じです。

「認可車庫面積」とは? 正確な面積を確認する方法

── では、「認可車庫面積」は、どのように確認すれば良いのでしょうか?

阪本: これは、運輸局が管理している会社の公式ファイルである「事業者台帳」に記録されている面積です。

具体的には、会社設立時の新規許可申請書や、その後に車庫の移転・拡張を行った際の事業計画変更認可申請書に添付した「車庫の図面」に記載されている面積が、現在の認可車庫面積となります。まずは、これらの過去の申請書類の控えを確認するのが一番です。

── もし、過去の書類が見当たらない場合は?

阪本: その場合は、営業所を管轄する運輸支局の窓口で相談すれば確認できることがあります。それでも不明な場合は、「事業者台帳」自体の情報開示請求手続きを行うことで、正式な記録を確認できますが、これには時間がかかる場合があります。

注意点として、自社で確保しているつもりでも、運輸局へ届けていない未認可のスペースは、認可車庫面積には含まれません

必要な車庫面積の計算方法:「参考値」と「実測+50cm」

── 認可車庫面積に対して、必要な面積はどのように計算するのですか?

阪本: 配置する全車両(既存車両+増車車両)に必要な面積(所要面積)を計算します。簡単な方法としては、運輸局が示している車両サイズごとの「占有面積の参考値」を使う方法があります。

例えば、大型車(7.5t以上)なら1台あたり38㎡、2t車なら15㎡といった目安です。この参考値で計算した合計面積が、認可車庫面積に余裕で収まるなら、通常はこの計算でOKです。

── 面積に余裕がない場合は、どうすれば?

阪本: 参考値で計算して、認可車庫面積に対してギリギリ(東京運輸支局管内では、計算上の所要面積が認可面積の100%を超える場合)だと、「車庫面積に余裕がない」と判断され、より厳密なチェックが必要になります。

具体的には、車庫の平面図上で、配置する全車両を「車両の前後左右にそれぞれ50cm以上の間隔」を空けて配置できるかどうかのシミュレーション(車両配置図の作成)を行う必要があります。先日、東京運輸支局の窓口に行ったところ。増車手続きのために窓口に来られていた運送事業者様が、車両配置図がないと増車手続きを進められないと、担当官に言われていました。

面積に余裕がない場合の対応:図面での収容シミュレーション

── なぜ50cmの間隔が必要なのですか? 物理的に駐車できれば良いのでは?

阪本: これは、車両の日常点検のためのスペース確保という観点から定められているルールです。ですから、運転技術があって、たとえ物理的にギリギリ駐車できたとしても、図面上でこの50cm間隔を確保して全車両を配置できなければ、許認可上は「収容能力が足りない」と判断されてしまいます。

このシミュレーションには、正確な車両の長さ・幅の数値が必要になるので、車検証や新車の場合は諸元表の準備も必要です。

車庫面積が不足する場合:拡張の「認可申請」手続きと期間

── シミュレーションしても、どうしても全車両が収まらない場合は、増車は諦めるしかないのでしょうか?

阪本: いえ、その場合は「認可車庫面積を増やす」手続きを行います。具体的には、隣接地を借り増ししたり、別の場所に新たな車庫を確保したりして、その増えた(あるいは新しい)車庫スペースを運輸局に申請し、認可を受けるのです。

ただし、これも重要な点ですが、車庫面積の変更は「事業計画変更認可申請」に該当するため、申請してもすぐに認可されるわけではありません

── 認可には、どれくらいの期間がかかりますか?

阪本: 営業所が東京や神奈川にある場合、申請が受理されてから認可が下りるまで、通常2~3ヶ月程度の審査期間が必要になります。

つまり、認可車庫面積が不足している場合の増車は、①拡張(または新規)車庫の準備 → ②車庫拡張の認可申請(審査に2~3ヶ月)→ ③(認可後)増車手続き(連絡書取得)→ ④緑ナンバー取得、という流れになり、車両の手配とは別に、最低でも2~3ヶ月以上の期間が余分にかかることになります。

新しい土地を車庫にする場合は、その土地が車庫要件(広さ、立地、前面道路幅員など)を満たすかの調査から始める必要があります。

増車成功の鍵は事前確認! スケジュール管理と専門家の活用

── 増車は、荷主さんからの依頼で急いでいるケースも多いと思いますが、車庫面積の確認を怠ると、大幅なスケジュール遅延につながるのですね。

阪本: まさにその通りです。

ですから、増車を検討される際には、車両の選定と「同時」に、必ず「増車後の全車両を収容できる認可車庫面積が確保されているか」を確認することが、スムーズな増車を実現するための鍵となります。

もし面積が不足しているようであれば、車庫拡張に必要な期間(2~3ヶ月+準備期間)を考慮して、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。

── 最後に、増車を検討している事業者の方へアドバイスをお願いします。

阪本: 新しい車両を迎えることは、事業拡大の証であり、喜ばしいことだと思います。新車なら、その喜びはなおさらだとお察しいたします。しかしながら、その喜びをスムーズな運行開始に繋げるためには、車両の手配だけでなく、法令遵守状況の確認、そして特に「認可車庫面積」の事前確認が不可欠です。

「車両はもうすぐ納車なのに、車庫の問題で緑ナンバーが付けられない!」という事態は、本当によく聞く話です。確実に増車スケジュールを進めたい場合は、ぜひ早い段階で私ども運送業専門の行政書士にご相談ください。現状の確認から、現地調査を含む必要な手続きの代行、スケジュール管理まで、しっかりとサポートさせていただきます。

── 事前の確認と計画が何より重要ということですね。本日もありがとうございました。

阪本: こちらこそ、ありがとうございました。

お問い合わせは東京03-5843-8541、神奈川044-322-0848まで。

メールでのお問い合わせは24時間受け付けております。なお、報酬額のお見積もりは、面談(対面もしくはオンライン)にて詳しいお話をお聞きしてからのご提示となりますので、ご了承ください。

お問い合わせには、必ず2営業日以内に返信しております。返信が届かない場合には、

といった原因が考えられます。メールが届かない場合には、上記をご確認いただいたうえ、お手数ですが再度メールフォームよりお問い合わせください。

※We are very sorry, but we are available only in Japanese language.

    お名前(会社名) *必須

    メールアドレス *必須

    お電話番号 *必須

    ご希望の返信方法 *必須

    メッセージ本文 *必須

    お客様の声

    お客様の声

    試験対策セミナー

    image

    試験対策個別サポート

    行政書士

    行政書士阪本浩毅
    代表行政書士:阪本浩毅
    登録番号:13080458

    行政書士内藤香織
    行政書士:内藤香織
    登録番号:18091673

    運送業ブログ:記事一覧

    ブログ記事目次

    メディア掲載

    お問い合わせ

    お問い合わせは東京03-5843-8541、神奈川044-322-0848まで。

    都庁前オフィス

    武蔵小杉オフィス