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許可後にまさかの車両変更? 運輸開始前のトラック入替の難しさと手続きを専門家が解説

今回も、運送業の許認可申請を専門とする行政書士の阪本浩毅さんにお話を伺います。念願の運送業(一般貨物自動車運送事業)許可を取得!さあ、運輸開始に向けて準備を…という段階で、予期ぬ事態が発生することがあります。それは、申請時に計画していた車両が、事故や故障などで使えなくなってしまうケースです。今回は、許可取得後から運輸開始までの間に、使用する車両を変更する場合の手続きと、その難しさについて詳しく解説していただきます。

許可は出たけど車が… 運輸開始前の車両変更は可能?

── 阪本さん、本日もよろしくお願いいたします。運送業の許可が無事に出た後、例えば、緑ナンバーを付けようと思っていたトラックが事故で廃車になってしまった、あるいは、重大な故障が見つかって修理費用が高額になる、といった理由で、運輸開始前に車両を変更したい、ということは可能なのでしょうか?

阪本: よろしくお願いします。結論から申し上げますと、許可取得後から運輸開始までの間に車両を変更することは「可能」ではあります。しかし、これは強調しておきたいのですが、決して「簡単」ではありません。むしろ、可能な限り避けるべき手続きであり、最後の手段と考えていただくのが良いでしょう。

── 最後の手段、ですか。そんなに難しい手続きなのですか? 許可が出る前や、運輸開始後よりも大変なのでしょうか?

阪本: はい、意外に思われるかもしれませんが、運輸開始後の車両変更(いわゆる代替や増車・減車)と比べても、この「許可後~運輸開始前」の車両変更は、手続き上のハードルが格段に高いのです

なぜなら、許可は申請時に提出された「事業計画」全体(人・物・金・場所の全て)を審査した上で出されているため、その根幹の一つである車両を変更することは、許可の前提条件を変更することになるからです。安易に進めると、計画全体の整合性が取れなくなり、最悪の場合、許可取得から1年以内という運輸開始期限に間に合わず、許可そのものが取り消されてしまうリスクすらあります

なぜ難しい? 運輸開始前の車両変更がクリアすべき3つの壁

── 許可の前提が崩れる、というのは具体的にどういうことでしょうか? なぜそんなに難しくなるのですか?

阪本: 運輸開始前に車両を変更する場合、大きく分けて3つの条件をクリアする必要があります。
一つ目は、当然ですが、変更後の車両が運送業の許可基準(安全性、構造など)に適合していること。

二つ目は、これが最大の難関ですが、車両変更後の事業計画全体(車両購入費、税金、保険料などを含む)に必要な資金(所要資金)が、許可申請時に申告した自己資金額の「範囲内」に収まっていること

三つ目は、変更後の車両が、申請時に確保した車庫に収容でき(収容能力)、かつ車庫の前面道路の幅員(道幅)に対して、車両制限令に違反しない大きさであること。
これらの条件を全て満たしていることを、改めて運輸局に証明し、承認を得なければなりません。

最大の難関:「自己資金額」の壁と資金計画への影響

── 二つ目の「自己資金額の範囲内」というのが、最大の難関とのことですが、詳しく教えていただけますか?

阪本: はい。運送業許可申請では、事業開始に必要な資金(所要資金)を算出し、それを賄えるだけの自己資金があることを、銀行の残高証明書などで証明します。

重要なのは、この申請時に証明した「自己資金額」は、後から増やすことができない、ということです。許可はその自己資金額を前提に出ています。一方で、事故や故障で車両を変更する場合、元の車両が使えないわけですから、新たにより高額な車両を用意することになり、結果として「所要資金」が増加するケースがほとんどです。

── 自己資金は増やせないのに、必要な資金が増えてしまう、と。

阪本: そうなんです。例えば、申請時に自己資金2000万円を証明し、当初計画の所要資金が1800万円だったとします。この時点では200万円の余裕があります。しかし、当初500万円で購入予定だった車両が事故で使えなくなり、急遽、同等の中古車を探したら600万円だったとします。

すると、変更後の所要資金は 1800 – 500 + 600 = 1900万円 となり、自己資金2000万円の範囲内なので、まだ可能性はあります。

しかし、もし代わりの車両が800万円だったら、所要資金は 1800 – 500 + 800 = 2100万円 となり、自己資金2000万円を超えてしまいます。この場合は、原則として車両変更は認められません。多くの場合、申請時の自己資金額は、所要資金に対してそれほど大きな余裕を持たせていないため、この「資金の壁」にぶつかってしまうのです

── それは厳しいですね…。どうすれば良かったのでしょうか?

阪本: 理想を言えば、最初の許可申請の段階で、できるだけ故障リスクの低い、信頼性の高い車両を選定することです。そして、自己資金額も、ギリギリではなく、ある程度の余裕を持たせて申告しておくことが、こうした不測の事態への備えになります。もちろん、未来を完全に見通すことはできませんが。

車両が大きくなる場合の注意点:車庫と前面道路の再確認

── 三つ目の、車両の大きさに関する注意点はどうでしょうか?

阪本: 変更後の車両が、元の車両と同じサイズか、より小さいサイズであれば、車庫の収容能力や前面道路の幅員については、通常問題になりません。しかし、もし変更後の車両が元の車両よりも「大きく」なる場合は、注意が必要です。

車庫については、全ての車両が前後左右50cmの間隔を確保して収容できるか、再度確認が必要です。前面道路についても、変更後の(より大きい)車幅に対して、道路幅員が車両制限令の基準を満たしているか、再確認が必要になります。

運輸開始前の車両変更:運輸局への「承認」手続き

── これらの条件をクリアできる見込みがある場合、具体的にどのような手続きをすれば良いのでしょうか?

阪本: 許可取得後に交付される許可書には、「運輸開始前には、運輸局長の承認がなければ事業計画等を変更してはならない」といった条件が付されているはずです。

この「運輸局長の承認」を得るための手続きを行います。具体的には、「一般貨物自動車運送事業の運輸開始前における事業計画変更届出書」という書類を作成し、運輸支局に提出します。

── 届出書には、どのような書類を添付するのですか?

阪本: 主に、変更前と変更後の内容を比較する「事業計画の新旧対照表」(特に資金計画と使用車両の欄)と、変更後の新しい車両を使用する権利があることを証明する書類が必要です。例えば、新しい車両が自社所有なら名義変更後の車検証コピー、リースならリース契約書、購入なら売買契約書などです。

そして、最も重要なのが、資金計画(様式2)を、変更後の車両の取得価格、自動車税、重量税、環境性能割、自賠責保険料、任意保険料などを全て反映させて「再計算」し、それでも当初の自己資金額の範囲内に収まっていることを示す必要があります。これらの書類一式を、正本・副本・控えの3部作成し、運輸支局に提出します。

車両変更は最終手段! 不安な場合は専門家へ相談を

── 本当に複雑で、影響範囲が大きい手続きなのですね。

阪本: はい。ですから、繰り返しになりますが、許可取得後から運輸開始までの間の車両変更は、可能な限り避けるべきです。安易に進めると、自己資金の壁にぶつかったり、他の要件を満たせなくなったりして、最悪の場合、1年以内に運輸開始できずに許可失効、という事態になりかねません

── 最後に、どうしてもこの期間に車両変更が必要になってしまった事業者の方へ、アドバイスをお願いします。

阪本: まず、変更が必要になった時点で、自己資金の範囲内で収まるか、車庫・道路要件はクリアできるか、冷静に現状を分析することが第一です。特に資金計画はシビアに見てください。もし、ご自身での判断や手続きに少しでも不安がある場合は、すぐに専門家にご相談されることを強くお勧めします。状況によっては、変更がそもそも不可能な場合もありますし、可能な場合でも、手続きを正確かつ迅速に進めないと、運輸開始期限が迫ってきてしまいます。手遅れになる前に、ぜひご相談ください。もちろん、私ども行政書士法人シグマでも、こうした難しいケースのご相談・手続き代行を承っております。

── よく分かりました。事前の計画と、万が一の際の迅速な相談が重要ですね。本日もありがとうございました。

阪本: こちらこそ、ありがとうございました。

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