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車庫前の道幅が足りない? 運送業許可の難関「道路幅員」問題を専門家が事例で解説

今回も、運送業の許認可申請を専門とする行政書士の阪本浩毅さんにお話を伺います。運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可を取得する上で、車庫の確保は必須ですが、その車庫選びにおいて「前面道路の幅員(ふくいん)」、つまり道幅が大きな関門となることがあります。今回は、この分かりにくい「幅員」の問題に焦点を当て、どのようなルールがあり、実務上どのように扱われているのか、具体的な事例も交えて詳しく解説していただきます。

運送業の車庫選び:なぜ前面道路の「幅員」が重要なのか

── 阪本さん、本日もよろしくお願いいたします。運送業の車庫には様々な要件があると伺っていますが、特に「前面道路の幅員」が問題になりやすいというのは、どういうことでしょうか?

阪本: よろしくお願いします。はい、運送業の車庫には、営業所からの距離、必要な広さ、使用権原など多くの要件がありますが、その中でも「車庫の出入口に面した道路の幅(=幅員)」に関するルールは、見落としや誤解が多く、トラブルになりやすいポイントです。具体的には、車庫に駐車したいトラックの大きさに対して、前面道路の幅員が足りない、という問題が起こりえます。

── 道幅が足りないと、どうなるのですか?

阪本: 運送業に使用するトラックは、当然ながら一般的な乗用車よりも大きいです。狭い道路に大きなトラックが出入りすると、他の交通を妨げることになり、安全上の問題が生じやすくなります。

そのため、道路の幅と、そこを通行できる車両の大きさ(特に車幅)について、「車両制限令」という法律でルールが定められており、運送業の車庫はこのルールに適合している必要があるのです。事前にしっかり確認せずに車庫を契約してしまうと、いざ許可申請という段階になって「この道幅では、車両制限令違反になるため、予定していたトラックの車庫として使えません」となっていまいます

自己計測はNG!「道路幅員証明書」と「車両制限令」の基本

── なるほど、安全確保のためのルールなのですね。その道路の幅員は、どのように確認・証明すれば良いのでしょうか? メジャーで自分で測れば良いのですか?

阪本: それが重要な点でして、ご自身で道路幅を計測しても、残念ながら運輸局への証明としては認められません。ご自身でメジャーで測ったり、歩幅で測る方もいらっしゃいますが、どれも間違いです。

原則として、車庫の前面道路を管轄する市区町村などの自治体(道路管理者)が発行する「道路幅員証明書」という公文書を取得し、提出する必要があります。この証明書に記載された幅員の数値に基づいて、使用できる車両の幅が決まります。

── なぜ道路幅員証明書が必要なのですか?

阪本: 道路管理者が発行する証明書によって、客観的で統一された基準に基づいた幅員が証明されるからです。また、単なる幅だけでなく、その道路が車両制限令のどの条項(後述しますが、交通量などによって適用条項が変わります)に該当するかの判断も、道路管理者が行います。

もし自己計測を認めてしまうと、測り方や解釈によってバラつきが出てしまい、公平性や安全性が担保できなくなるためです。ただし、例外として、前面道路が「国道」の場合は、その信頼性から幅員証明書の提出は不要とされています。

車両制限令の計算式:原則と注意点

── 道路幅員証明書で幅員が分かったとして、具体的に使用できる車両の幅は、どのように決まるのでしょうか?

阪本: 車両制限令の第5条にルールが定められています。非常に簡略化して、一般的なケース(第5条第2項)の計算式を示すと、以下のようになります。

「通行可能な車両の最大幅」 ≦ (「道路幅員証明書の幅員」 - 0.5メートル) ÷ 2

例えば、道路幅員証明書の幅員が5.5メートルであれば、(5.5 – 0.5)÷ 2 = 2.5メートル となり、車幅が2.5メートル以下の車両までが通行可能、というのが原則的な考え方です。

── 意外と単純な計算式に見えますが…

阪本: そうですね、式自体は。しかし、注意が必要なのは、これが「原則」だということです。車両制限令第5条には第1項や第3項もあり、例えば、交通量が極めて少ないと道路管理者が指定した道路や一方通行の道路(第1項)、あるいは歩行者が特に多い道路(第3項)などでは、計算式が変わってきます。どの条項が適用されるかは、道路の状況や道路管理者の判断によりますので、単純に幅員だけで判断するのは危険です。

私道に面した車庫の場合は?

── もし、車庫の前面道路が公道ではなく、私道だった場合はどうなりますか?

阪本: その場合は、二つの対応が必要になります。まず、その私道を通行することについて、私道の所有者全員から書面による「通行承諾」を得る必要があります。加えて、その私道が最終的に接続する「最初の公道」について、「道路幅員証明書」を取得し、その公道が車両制限令の基準を満たしていることを証明しなければなりません。

自治体によって判断が違う? 実際の事例紹介

── なるほど…かなり複雑ですね。実際に、地域によって運用が異なるようなことはあるのでしょうか?

阪本: まさにそこが、この幅員問題の難しいところです。法令の解釈や運用は、道路管理者である各自治体によって異なる場合があり、同じような幅員の道路でも、結果が変わってくることがあります。私たちが実際に経験した事例をいくつかご紹介しましょう。(※あくまで過去の事例であり、同様の対応が保証されるものではありません)

事例1:埼玉県戸田市
前面道路の幅員証明書は3.91mで、車両制限令第5条第2項の道路でした。計算上は最大1.705m幅の車両しか通れません。しかし、市に相談した結果、「特殊車両通行認定」という別の許可を取得すれば、2m超の車両も通行可能という結論になりました。ただし、この認定は有効期間(2年)があり、更新が必要です。

事例2:東京都世田谷区
前面道路は3.57mと狭かったのですが、交通量が極めて少ない「極小指定道路」(第5条第1項該当)でした。世田谷区独自の運用で、計算式が「幅員-1.5m」となり、結果として最大2.07m幅の車両まで通行可能でした。幅員証明書にもその旨が記載されており、非常に分かりやすかったです。

事例3:神奈川県相模原市
前面道路は幅員5.0m(第5条第2項)。計算上は最大2.25m幅までですが、市の土木事務所に確認したところ、「2.49m幅のワイド車も通行可能」との見解でした。この場合、運輸局には幅員証明書だけでなく、「市の見解を示す書類」も併せて提出し、許可基準を満たしていると判断されました。

事例4:東京都府中市
府中市は幅員証明書ではなく「道路台帳」が交付されます。幅員4m(第5条第2項)で、計算上は最大1.75m幅まで。市に特殊車両通行認定の相談をしましたが、「認められない」との回答でした。結果、この場所は4ナンバーの小型トラック専用の車庫としてしか使えませんでした。

事例5:神奈川県川崎市

道路幅員証明書には有効車道幅員は5mで第5条第2項道路に該当することが記載。川崎市に確認したところ、計算通り、最大2.25m幅までの車両が通行可能という、原則的な扱いでした。車幅2.49mの車両を通行させたかったため、特殊車両の通行認定申請を行い、その認定を取得しました。

── 本当に、自治体によって判断が全く異なるのですね! これは事前に確認しないと、大きな落とし穴にはまりそうです。

阪本: おっしゃる通りです。これらの事例からも、道路管理者である自治体の判断がいかに重要か、お分かりいただけたかと思います。

車庫選びは幅員確認を最優先に! 専門家への相談も有効

── では、これから車庫を探す事業者は、どのような点に注意すれば良いでしょうか?

阪本: まず、一般論として、前面道路が国道であるか、明らかに道幅が広い(目安として6.5m以上)場合は、幅員の問題はクリアできる可能性が高いです。しかし、それ以外の一般的な市区町村道などの場合は、必ず確認が必要です。見た目で「広そうだ」とか、不動産屋さんの「大丈夫ですよ」という言葉を鵜呑みにせず、契約前に必ず道路を管轄する自治体の道路管理担当部署(土木課、道路課など名称は様々です)に確認することをお勧めします。

── 自治体には、具体的に何を確認すれば良いですか?

阪本: 「この場所を運送業の車庫として借りたい(購入したい)のだが、前面道路の正式な幅員と、車両制限令のどの道路区分(第5条・第6条なのか、そして、第1項か第2項かなど)に該当するか教えてほしい」と尋ね、「道路幅員証明書」を取得してください。その上で、ご自身が使用したい車両の幅が車両制限令に抵触していないか、必要であれば特殊車両通行認定などの可能性があるか、といった点まで確認できると万全です。

── 事前の確認が本当に大切なのですね。

阪本: はい。車庫は運送業の根幹となる設備の一つですから、ここでつまずかないように、慎重に進める必要があります。もし、ご自身での確認が難しい、あるいは許可申請全体を任せたいということであれば、もちろん我々のような専門家が、物件調査の段階からサポートすることも可能です。車庫の新設や移転に関するご相談も承っておりますのでご相談ください。

── シグマさんへの相談は無料ですか?有料ですか?

阪本:個別具体的な物件調査は、有料のコンサルティング業務として承っております。

── よく分かりました。幅員の問題は奥が深いですね。本日もありがとうございました。

阪本: こちらこそ、ありがとうございました。

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