賃貸契約書が原因で許可が下りない? 運送業の営業所・車庫契約の盲点を専門家が指摘
今回も、運送業の許認可申請を専門とする行政書士の阪本浩毅さんにお話を伺います。運送業を始めるには、営業所や車庫といった拠点が必要不可欠ですが、多くの場合、これらは賃貸物件を利用します。その際に提出する「賃貸借契約書」が、実は許可取得の成否を分ける重要なポイントになることがあるそうです。今回は、見落としがちな契約書のチェックポイントについて、詳しく解説していただきます。(※本記事は関東運輸局管内の取扱いを基にしています)
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契約期間は大丈夫?「2年以上の使用権限」と「自動更新」
── 阪本さん、本日もよろしくお願いいたします。運送業の許可申請では、営業所や車庫を確保している証明が必要とのことですが、賃貸の場合、契約書で特に注意すべき点は何でしょうか?
阪本: よろしくお願いします。まず基本として、運送業に使用する営業所、休憩睡眠施設、車庫については、申請者がそれらを安定的に使用できる権利を持っていること、つまり「使用権原」を証明する必要があります。自己所有の場合は不動産の登記簿謄本ですが、賃貸物件の場合は「賃貸借契約書」の写しを提出します。この契約書の内容が、運輸局の審査で細かくチェックされるんです。
── 具体的には、どのような点がチェックされるのですか?
阪本: 最初に確認されるのが「契約期間」です。運輸局は、許可日から起算して、原則として「2年以上」の契約期間が残っていることを求めます。これは、事業の継続性・安定性を担保するためですね。
── 契約更新日が迫っていて、残りの期間が2年未満の場合はどうすれば良いのでしょうか?
阪本: その場合でも、契約書に「期間満了時に自動的に契約が更新される」旨の条項、いわゆる「自動更新条項」が明記されていれば問題ありません。ただし、これが非常に重要なのですが、自動更新の約束が大家さんとの口約束だけで、契約書面上に記載がないケースが意外と多いのです。
── 口約束だけではダメなのですね。
阪本: はい、運輸局はあくまで書面で確認しますので、口約束は証拠になりません。このような場合は、大家さんに事情を説明し、契約書自体を作り直してもらうか、それが難しければ、現在の契約書に「本契約は期間満了時に自動更新とする」といった内容の「覚書」を別途作成し、双方で署名・捺印する必要があります。以前、口約束を信じて申請し、運輸局から指摘を受けて慌てて覚書を作成した、という事例もありました。また、賃貸借契約書上は自動更新条項が記載されていても、運輸局より、契約期間満了日から2年以上使用することの誓約書の提出が求められるケースがあります。
意外な落とし穴!契約書に「面積」の記載はありますか?
── 契約期間以外にも、見落としがちなポイントはありますか?
阪本: 次に注意したいのが、契約書に「物件の面積」がきちんと記載されているか、という点です。営業所は運行管理がしっかりできる広さを確保されていればよいですが、休憩睡眠施設や車庫には、それぞれ満たすべき広さの基準がありますから、運輸局は契約書でその面積を確認します。
── 面積が書かれていない契約書もあるのですか?
阪本: ええ、あるんです。不動産会社が仲介している一般的な事業用建物の賃貸借契約書であれば、通常は面積の記載欄がありますが、例えば、親会社・子会社間での契約や、知り合いの会社から場所を借りる場合など、当事者同士で簡易的に作成した契約書だと、面積の記載が漏れていることがよくあります。また、月極駐車場を車庫として借りる場合も、契約書には駐車枠の番号しか書かれておらず、面積が記載されていないケースがほとんどですね。
── 面積が書かれていないと、やはり問題になりますか?
阪本: 問題になります。実際に「契約書に面積の記載がないと、その物件が本当に使用できるものか、また要件を満たす広さかどうかが確認できない」として、運輸局から補正(修正指示)を受けたケースがあります。月極駐車場の場合などは、契約書の空いているスペースに、借りる区画全体の面積(例:「合計〇〇㎡」など)を追記し、その箇所に貸主と借主双方が確認印(訂正印のようなもの)を押すといった対応が必要になります。
見落とし厳禁!車庫が公道に面していない場合の「通行承諾」
── 特に車庫の契約で、他に気をつけるべき点はありますか?
阪本: 車庫として借りた区画が、直接公道に接していれば問題ないのですが、月極駐車場の中の一区画や、奥まった土地を借りる場合など、借りた区画から公道に出るまでに、他の土地(大家さんの敷地など)を通る必要があるケースがありますね。この場合に「敷地内の通行承諾」という点が問題になります。
── 通行承諾、ですか?
阪本: はい。借りた区画だけでなく、そこに至るまでの通路部分についても、事業用のトラックなどが通行することについて、土地の所有者(通常は貸主)から書面で承諾を得ている必要がある、と関東運輸局では判断しています。個人的には少し細かすぎるのでは?と感じる部分もありますが、実務上、ここは厳しくチェックされます。
── 具体的には、どのように対応すれば良いのでしょうか?
阪本: 対応としては、賃貸借契約書の特約事項の欄などに、「借主が事業用自動車で本件駐車場区画に到達するため、貸主所有の敷地内通路を通行することを承諾する」といった一文を加えてもらうのが一つです。あるいは、契約書とは別に「通行承諾書」といった簡単な書面を作成し、貸主から署名・捺印をもらう方法でも構いません。これも、申請直前になって慌てないよう、契約時に確認・対応しておくべきポイントです。大家さんによっては「え、そんなものが必要なの?」と驚かれることもありますので、事前に説明が必要です。
運送会社から直接借りるなら要注意!「減坪」の確認は必須
── 運送会社同士の繋がりで、「うちの車庫が空いているから貸してあげるよ」という話もよく聞きますよね。
阪本: はい、業界の風習としてよくあるケースです。不動産業者を介さず、知り合いの運送会社から直接借りる形ですね。手続きもスムーズに進むと思われがちですが、ここに「減坪申請」という大きな落とし穴があります。
── 減坪、ですか?
阪本: 簡単に言うと、貸主(運送会社)が持っている車庫の認可面積を削る手続きのことです。たとえ物理的にスペースが空いていても、貸主側の認可図面上でそこが「自社の車庫」として登録されたままだと、借主側で新たに認可を取ることはできません。「一つの場所に二つの認可」は重複して認められないからです。
── 貸主側が「貸してあげる」と言っていても、書類上の手続きは別ということですね。
阪本: その通りです。しかも、貸主側にも事情がある場合があります。「いつか車両を増やすときのために、認可面積は減らしたくない」という心理が働くこともあるんです。
── それでは、いざ申請しようとした時に困ってしまいますね。
阪本: そうなんです。ですから、直接借りる場合には「いつまでに、どの範囲を減坪してくれるのか」を明確に約束しておく必要があります。貸主側の減坪申請し認可処分にならないと、借主側の許可は出ないというのが実務上のポイントです。
── 相手もプロの運送業者だから大丈夫、と過信せずに確認すべきですね。
阪本: おっしゃる通りです。契約書を交わす際に「本件認可申請のため、速やかに減坪申請を行うこと」といった条項を入れておかないと、後でトラブルになる可能性もあります。善意で貸してくれる相手だからこそ、法的な手続きの確認はシビアに行うべきですね。
約書はハンコを押す前に要確認!専門家のチェックも有効
── なるほど…契約書一つをとっても、運送業許可特有のチェックポイントがたくさんあるのですね。
阪本: そうなんです。多くの方が賃貸物件を利用されるからこそ、この賃貸借契約書は許可申請において非常に重要な書類となります。「契約書があるから大丈夫」と安易に考えず、判子を押す前に、今回お話しした契約期間、面積、そして車庫の場合は通行承諾といった点がクリアできているか、しっかり内容を確認することが不可欠です。
── 他にも、契約書全般で注意すべきことはありますか?
阪本: 基本的なことですが、借りる物件の所在地(住所)が正確に記載されているか、そして賃借人(借り主)の名称・住所が、許可申請者である会社の名称・本店所在地と完全に一致しているかも重要です。また、使用目的の欄に「事務所(営業所)」や「車庫」としての使用が認められているかどうかも確認が必要です。「住居」や「倉庫」目的の契約では認められない可能性があります。
── 本当に細部まで確認が必要なのですね。最後に、事業者の方へアドバイスをお願いします。
阪本: 賃貸借契約は、一度締結してしまうと、後から内容を変更するのは難しい場合があります。特に、運送業許可の要件に合わせて修正をお願いすると、大家さんによっては協力が得られない可能性もゼロではありません。ですから、理想を言えば、契約を締結する「前」に、契約書の案(ドラフト)を行政書士などの専門家に見せて、許可申請上問題がないかチェックしてもらうことをお勧めします。それが、結果的に許可取得までの時間を短縮し、余計なトラブルを避けることに繋がります。もちろん、我々にご依頼いただければ、契約内容のチェックからサポートさせていただきます。
── 事前の確認が何より重要ということですね。本日も大変勉強になりました。ありがとうございました。
阪本: こちらこそ、ありがとうございました。
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