運送業許可に必要な「車両」の条件とは? 台数・種類・取得タイミングを専門家が解説
運送業を行う上で主役となるのが、貨物を運ぶための「車両(トラック)」です。しかし、運送業の許可を取得するためには、この車両についても様々なルールが定められています。今回は、許可に必要な車両の条件について、運送業許認可のエキスパート、行政書士の阪本浩毅さんにお話を伺います。
──阪本さん、今回もよろしくお願いします。これまで運送業許可に必要な場所や人に関する様々な要件を伺ってきましたが、いよいよ事業の主役である「車両」、つまりトラックそのものについてお伺いします。これも、単にトラックを用意すれば良い、というわけではなく、何か特別な決まりがあるのでしょうか?
阪本:はい、よろしくお願いします。もちろんです。運送業を行うためには事業用車両が不可欠ですが、一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、その車両についても、確保すべき最低台数、使用できる車両の種類、そして車両の確保方法やそのタイミングなど、いくつかの重要なルールが定められています。単にトラックを1台や2台、適当に用意すれば良い、というわけでは決してありません。
──まず、基本となる「台数」についてですが、最低で何台の車両が必要になるのでしょうか?
阪本:運送業の許可を取得するためには、原則として、申請する営業所ごとに最低でも5両以上の事業用自動車を確保する計画がなければなりません。これが最低ラインです。
──営業所ごとに5両以上、ですね。例えば、トレーラー(牽引車と被牽引車)を使って運送する場合は、引っ張る側のトラクタと、引っ張られる側のシャーシを、それぞれ別々に1両としてカウントするのですか?
阪本:いいえ、そこは少し特殊なカウント方法になるので注意が必要です。トラクタ(牽引車)とシャーシ(被牽引車)を連結して一体として使用する場合は、そのトラクタとシャーシのセットで「1両」としてカウントします。ですから、例えばトラクタを2台、シャーシを3台用意するという計画では、連結できるセット数は2セット(2両分)にしかなりませんから、これでは最低5両の要件を満たさないことになります。この場合は、単車(トレーラーではないトラック)を3台用意しないと、最低車両台数の5台に満たないことになります。
──なるほど、セットで1両と数えるのですね。用意する車両は、必ず自分で購入しなければならないのでしょうか? リース車両を利用することはできますか?
阪本:いいえ、必ずしも自己所有である必要はありません。リース契約によって調達する車両でも、全く問題なく事業用車両として認められます。リース車両を使用する場合は、リース契約が締結済であることが前提になります。自己所有であれリース車両であれ、最も重要なのは、その車両を使用するための正当な権限を、許可申請者(会社または個人事業主)が持っていることを証明しなければならない、という点です。具体的には、自動車検査証(車検証)の「所有者」または「使用者」の欄に、許可申請をする会社名(または個人事業主名)がきちんと記載される必要があります。
──その「使用権原」があることは、どのように証明するのでしょうか?
阪本:車両が自己所有の場合は、車検証の写しを提出することで、所有者欄に申請者の名前が記載されていることを示し、使用権原を証明します。リース契約によって車両を使用する場合は、リース契約書の写しを提出します。また、まだ車両が納車されていない段階であっても、例えば特定の車両について売買契約が既に成立している場合は、その売買契約書の写しなどを提出することで、使用権原を確保する見込みがあることを証明できます。
──車両の所有権や使用権原に関して、実務上、特に注意すべき点はありますか?
阪本:これは本当によくあるケースなのですが、法人(会社)として運送業の許可を申請するのに、用意したトラックの車検証を確認してみたら、所有者の名義が、社長個人の名前のままになっている、という状況です。車検証の所有者欄が社長個人のままでは、その車両はあくまで個人の所有物であり、法人の車両としては認められません。この場合は、必ず許可申請の前に、管轄の運輸支局で名義変更(移転登録)の手続きを行い、車検証の名義を個人から法人へと変更しておく必要があります。これを忘れていると、審査が滞る原因になります。
──車検が切れている車両でも、許可申請に使うことはできますか?
阪本:はい、許可申請の手続き自体は、計画車両の中に車検が切れている車両が含まれていても進めることは可能です。ただし、当然ながら、実際にその車両を事業用自動車として登録し、緑色の事業用ナンバープレートを取得するためには、必ず車検に合格していることが前提となります。ですから、車検が通らない車両は5台の中に含めないでください。
──次に、許可に使える車両の「種類」についてですが、やはり大きなトラックでないとダメ、といった制限はあるのでしょうか?
阪本:いいえ、そんなことは全くありません。車両の種類に関する基本的な条件は、まず「軽自動車」や「二輪車(バイクなど)」は対象外となる、ということです。これら以外の車両であれば、車検証の「用途」の欄が「貨物」と記載されている車両であれば、それが大型トラックであろうと、小型トラックであろうと、全く問題ありません。
──「貨物」用途であれば良い、ということは、例えば街でよく見かけるハイエースやキャラバンといった、いわゆるバンタイプの車両でも、事業用車両として使えるのでしょうか?
阪本:はい、それらの車両でも、車検証上のナンバー区分が、いわゆる4ナンバー(小型貨物)や1ナンバー(普通貨物)に該当し、用途欄が「貨物」となっていれば、全く問題なく運送業の事業用車両として使用できます。同様に、プロボックスやサクシード、ADバンといった、いわゆるライトバン(小型貨物自動車)でも、もちろん大丈夫です。
──逆に、運送業の事業用車両としては使えない、という車両の種類はありますか?
阪本:最も注意が必要なのは、車検証に「最大積載量」が記載されていない車両です。例えば、同じハイエースやキャラバンでも、乗用タイプ(いわゆる3ナンバーや5ナンバー)のワゴン車などは、人を乗せることを主目的としているため、車検証に最大積載量の記載が「0kg」となっているか、あるいは記載自体がありません。このような車両は、法律上、貨物を運送するための車両とは認められませんので、残念ながら運送業の事業用車両として使用することはできません。
──次に、車両を取得する「タイミング」についてお伺いします。許可申請をする時点で、既に計画している5台以上のトラックを、現物として全て購入したりリースしたりして、持っていなければならないのでしょうか?
阪本:いいえ、必ずしも申請時に全ての車両が、現物として手元に揃っている必要はありません。購入する車両であれば売買契約書が締結され、リース車両であればリース契約が締結されている状況であれば、納車されていない状態でも運輸局への許可申請は進めることはできます。
──では、申請時には車両がなくても良い、ということですか?
阪本:いや、そういうわけではありません。重要なのは、申請時点で現物がなくても、「運送業の許可が下りたら、計画している特定の車両を確実に取得できる」ということを、客観的な書類によって証明する必要がある、という点です。
──具体的には、どのような書類で証明すれば良いのでしょうか?
阪本:売買契約書やリース契約書の写しの提出が必要になります。単に「許可が取れたら買う予定です」とか「リースするつもりです」といった、申請者の意向を示すだけではダメで、相手方(販売会社やリース会社)との間で、車両の特定と取得の約束がなされていることを証明しなければなりません。車両が特定されていない売買契約書やリース契約書はNGです。
──なるほど、取得の確実性が重要なんですね。ところで、環境規制、特にディーゼルトラックの「排ガス規制」についても、注意が必要だとよく聞きますが、これはどのような規制なのでしょうか?
阪本:はい、これは現在、運送業を始める上で非常に重要なチェックポイントの一つです。特にディーゼルエンジンを搭載したトラックについては、大気汚染の原因となる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)の排出量を削減するため、国や自治体によって厳しい排出ガス基準が設けられています。具体的には、各都道府県が条例で定めている「ディーゼル車PM排出規制に関する条例」や、国が法律で定めている「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(通称:自動車NOx・PM法)」といった規制があり、これらの基準に適合しない古いディーゼルトラックは、特定の地域(その車両を使用する本拠地として登録する地域)では、そもそも登録して使用することができない、というルールになっています。
──関東地方では、どの地域が、これらの排ガス規制の対象になっているのでしょうか?
阪本:私どもが主に関わることが多い関東運輸局の管内ですと、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県のほぼ全域が、これらのディーゼル車に関する排ガス規制の対象地域となっています。ですから、これらの地域に営業所を置いて運送業を始めようとする場合は、使用する予定のディーゼルトラックが、これらの規制基準にきちんと適合しているかどうかを、必ず事前に確認しなければなりません。
──もし、購入しようとしている中古トラックなどが、基準に適合していない車両だった場合は、どうすれば良いのでしょうか? もう使えないのですか?
阪本:その場合は、残念ながら、そのままの状態では規制対象地域内で事業用車両として登録・使用することはできません。対策としては、主に二つの方法が考えられます。一つは、後付けでDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)や酸化触媒といった、排出ガスに含まれる有害物質を減少させるための装置を車両に取り付けて、規制基準をクリアする方法です。もう一つは、その車両の使用を諦めて、最初から規制に適合している別の車両を探し直す、という方法です。DPFなどの後付け装置の装着には、それなりの費用がかかりますので、特に中古車などを購入する際には、最初から規制適合車であるかどうかを、販売店によく確認することが、結果的にコストを抑える上でも非常に重要になります。
──その車両が規制に適合しているかどうかは、どうすれば確認できますか?
阪本:一番確実なのは、車検証を確認することです。車検証の「備考欄」に、例えば「この自動車はNOx・PM法に適合しています」とか、「〇〇都(県)ディーゼル車規制条例に適合」といった記載や、適合していることを示すステッカーに関する情報などが記載されていることが多いです。もし、車検証を見ても記載がない場合や、記載内容の意味がよく分からない場合は、その車両を購入しようとしている販売店に確認するか、あるいは管轄の運輸支局などに問い合わせて確認するのが確実です。
──車両の準備にあたっては、これまでにお話しいただいた車庫の要件、特に「車庫の大きさ」や「車庫に面する道路の幅員」も、密接に関係してきますよね?
阪本:まさしくその通りです。これは非常に重要な点で、車両の計画と車庫の計画は、常にセットで考えなければなりません。まず「車庫の大きさ」については、計画している全ての車両が、それぞれ前後左右に50cm以上の空間を確保して、きちんと駐車できるだけの有効な広さが必要でしたよね。ですから、もし先に車庫の場所を決めてしまっている場合は、その確保できた車庫の寸法(間口や奥行きなど)を正確に測量し、そこに物理的に収まる大きさの車両、かつ規定の台数しか、事業用車両として計画することができない、ということになります。逆に、先に「この大きさのトラックを使いたい」という希望がある場合は、そのトラックを5台以上、50cm以上の間隔を空けて駐車できるだけの広さを持つ車庫を探さなければならない、ということになります。
──「車庫の前面道路の幅員」も、使用できる車両の大きさと関係がありましたね。
阪本:はい。車庫の出入り口に接している前面道路の幅員が、もし6.5m未満の場合は、その道路を通行できる車両の幅に制限がかかる可能性がある、とお話ししました。ですから、もし確保できた車庫の前面道路が狭い場合には、その道路を通行することが法令上許可される車幅のトラックしか、その車庫を使用する事業用車両として計画することができません。例えば、「本当は大きな冷凍車(車幅2.5m)を使いたいけれど、確保できた車庫の前の道が狭くて、その道を通れるのは中型トラック(例えば車幅2.3m程度)までだと言われたので、計画を変更せざるを得ない」といったケースも、実際には起こりうるわけです。ですから、車両の選定と車庫の選定は、常に相互に影響し合うものとして捉え、両方の要件を同時に満たすことができるように、慎重に計画を進める必要があります。
──なるほど…。車両の準備一つをとっても、台数、種類、権利関係、取得タイミング、環境規制、そして車庫との物理的な整合性まで、本当にいろいろな角度から検討が必要で、思った以上に大変だということがよく分かりました。
阪本:そうですね。単純に「トラックを5台用意すれば良いのだろう」と考えていると、後で「この車両は使えなかった!」とか「この車庫には計画の車両が入らない!」といった問題に直面し、計画の大幅な見直しや、余計な費用・時間がかかってしまう可能性があります。
──最近の状況として、車両の準備に関して、何か特に気をつけるべきことなどはありますか?
阪本:そうですね、これは最近多くの事業者様からお聞きする話ですが、特に中古トラックの市場において、運送業の許可要件(特に排ガス規制など)をクリアしている、状態の良い車両が、以前に比べて品薄になっている、あるいは価格がかなり高騰している、という状況があるようです。中古車が品薄なのは新車の納車期間が長くなっているのも一つの要因です。新車発注しようとしても生産枠がない、生産枠があっても架装に時間がかかって納車がいつになるかわからない状況だと、中古車が人気になりますよね。いざ他の準備(資金や人員、場所など)が整って、さあ許可申請だ、となっても、肝心の事業用車両がなかなか市場で見つからない、あるいは見つかっても予算内で確保できない、といった事態も起こりえます。
──それは困りますね。では、どうすれば良いのでしょうか?
阪本:やはり、運送業の許可取得を具体的に考え始めたら、できるだけ早い段階から、どのような種類の車両を何台くらい使用するのかという大まかな計画を立て、実際に中古車市場の情報を集めたり、ディーラーやリース会社に相談したりするなどして、車両を探し始めることを強くお勧めします。車両の確保に予想以上に時間がかかる可能性を見越して、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが、スムーズな許可取得と事業開始のためには非常に肝心です。
──もし、「いくつか候補の車両は見つかったけれど、これが本当に運送業許可の要件を満たしているのかどうか、自分では判断に自信がない」といった場合は、専門家に相談することはできますか?
阪本:はい、もちろんです。「購入を検討している中古トラックの車検証を見たけれど、排ガス規制に適合しているのかよく分からない」「この年式のトラックで、あと何年くらい使えるだろうか?」「この車両で本当に申請を進めて大丈夫だろうか?」など、運送業に使用する車両に関して、少しでもご不安な点や不明な点をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、私ども行政書士法人シグマにご相談ください。ご提供いただいた車検証などの情報をもとに、許可要件を満たしているかどうか、申請にあたって何か注意すべき点はないかなどを、運送業専門の行政書士の視点から確認し、的確なアドバイスをさせていただきます。
──今回も大変勉強になりました。車両選びの重要性と、多岐にわたる注意点について、よく理解できました。ありがとうございました。
阪本:どういたしまして。車両は事業の根幹ですから、ぜひ計画的な準備を進めていただければと思います。
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